研究実績の概要 |
2015年度は、次年度以降の事象関連電位計測実験に備えて、丁寧な文献の調査を実施した。具体的には、英語以外のヨーロッパ言語(特にドイツ語)に焦点をあて、Bott (2010)などについて実験パラダイムや結果について調査を進めた。英語では効果が見られていたパラダイムでもドイツ語で効果が観察されていないものもあり、その理由についても今後丁寧に調べていくことにした。日本語のアスペクト強制については、新たな論文が見つかっているので、それらとドイツ語を比較して、次年度以降の実験の準備に当てることにした。 アスペクト強制について、時間副詞と動詞の関係を操作する実験パラダイムを工夫する必要がある。精緻な構造構築についての文処理メカニズムと、その効果については、Fujii, et al. (2016) として発表した。格助詞と動詞のタイプの交互作用を観察し、空項目の存在について動詞の形態による予測が即時的に行われていることが示された。このような空項目の存在についての予測は、アスペクト強制に関わる目的語の存在・特性の予測に活用することができると考えている。これらの新たな発見を用いて、今後の実験パラダイムの構築に利用する。 その他の成果としては、文産出メカニズムに関する論文(久保他, 2015)が出版された。本研究課題は、文産出メカニズムについて中心的に扱うものではないが、動詞の産出処理について検討したことは、動詞の意味的なタイプ・形態を操作する本研究課題の実験を計画する際に有用な情報を提供してくれるものだと理解している。また、招待講演を1件を実施した。この講演は、本研究課題の成果発表についてではないが、今後の研究実施について協力を求める際に効果を発揮する広報活動であったと考えられる。
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