人間言語の文理解メカニズムは多くの予測処理によって支えられていることは明白だが,その予測の中身,とくに意味的な情報の果たす役割については未だに多くの問題点が残されている。本研究課題は,意味処理の中でもアスペクト強制(aspectual coercion)という現象を切り口に,文理解過程の重要な側面である事象の理解の具体的な性質を探った。時間副詞,遊離数量詞の共起,動詞のタイプ等を操作した文を材料とし,行動実験により,先行研究で提案されている意味処理の詳細を丁寧に検証し,意味情報の即時的予測処理の特性を明らかにした。
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