2018年度は本研究課題の最終年度であったため、これまでに収集した資料を包括的にまとめる作業を主に行った。2017年度に行ったLampungでの親族呼称・敬称の調査結果をまとめた口頭発表と、Tonsawang語の形態論についての口頭発表を5月に行い、ジャワ語地域にけるジャワ語とインドネシア語のレジスターの違いとジャワ語話者のインドネシア語にみられるジャワ語からの借用についてまとめた結果を7月に口頭発表した。マレー語変種とインドネシア語の少数民族語であるBantik語にみられる談話構造と談話小辞についての研究を行う中で明白になった事象を同じく7月に口頭発表にまとめた。これらの口頭発表に関してはそれぞれ学術論文としてまとめており、2019年度に順次公開する予定である。 マレー語の音声、特に語ストレスの位置と文イントネーションに関する調査も進めてきた。2018年12月には国内在住のインドネシア人からインドネシア語マナド方言の音声データを収集し、マナド方言のストレスとイントネーションの関係の研究を進め、論文にまとめた。この成果は東京外国語大学から刊行されている学術雑誌で発表する予定である。 オーストロネシア語族の諸言語における情報構造に関する論文を集めた論文集を編集し、2018年10月に刊行した。 2019年2月にはマレーシア国とブルネイダルサラーム国に出張し、多くのマレー語地域変種についての資料を収集することができた。 今年度の研究で実証できたことはインドネシア語という国家語は書記言語および改まった場面で使用される変種と、地域共通語として用いられる口語変種との違いがあり、口語変種は地域の民族語との併用状態を通じて多くの変異を持っていること、その変異は対人関係に必要不可欠な親族呼称・敬称や談話小辞に如実に現れることであった。
|