研究課題/領域番号 |
15K02532
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
金 庚芬 明星大学, 人文学部, 准教授 (50513892)
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研究分担者 |
関崎 博紀 筑波大学, 人文社会系, 助教 (30512850)
趙 海城 明星大学, 人文学部, 准教授 (90595084)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 談話行動 / 肯定的・否定的評価場面 / 日韓中対照研究 / 対人評価 / 会話分析 |
研究実績の概要 |
本研究では,日本,韓国,中国の母語話者同士の会話に見られる対人評価場面を取り上げ,肯定的・否定的評価場面における特徴を談話レベルで分析し,3言語の類似点と相違点を明らかにすることを目的としている.実際の会話におけるダイナミックな談話行動を分析するために,会話の録画録音,フォローアップインタービューの研究手法を用い,H27年度は,日韓中の会話データ60組(計120名)を収集し,H28年夏までに,全ての会話を文字化し,韓国・中国のデータは,日本語への翻訳作業も完了し,3言語の談話データを整備した. その後,60組の会話を,話題の開始方法,聞き手の反応,話し手の発話に含まれる情報の量や質など,進行時の相互行為の観点から談話分析の手法で分析した.その結果,日韓中ともに「得意分野や成功談」に関する話題はなかなか積極的に現れず,別の話題に移る傾向が強い一方,苦手なことや後回しにしている事柄を躊躇なく挙げていたことが分かった.しかし,その後の会話の展開の仕方は,各言語の会話から大きく異なる例が抽出された. 具体的に,日本語の会話では,片方の話者による自己否定的な評価が,もう片方の話者による評価の繰り返しや確認,同調的発話や,相づち詞を用いた発話促進の発話を経て,徐々に背景や類例などが開示されていく例が複数見られた.一方,会話展開においては類似していた韓国語と中国語であるが,韓国語話者は,同じ失敗を開示し合い,仲間意識を共有し,相手に助言してもらう安心感を表していたのに対し,中国語話者は,相手の自己否定が成立しないように,問題を限定的にしたり一般論を積極的に述べたりして,相手の自尊心を傷つけないように努めていることが分かった. 今後は,今回の分析により示唆された各言語での会話の進め方や志向性における異同をより明確にし,さらに肯定的な評価場面における会話展開の分析を進める予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二人の研究分担者と,定期的に打ち合わせを行い,データ分析を進めている.また,分析内容や担当言語における分担がはっきりしており,打ち合わせでは,それぞれの分析結果を照らし合わせ,活発な意見交換を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,今までの分析により示唆された各言語での会話の進め方や志向性における異同をより明確にし,さらに肯定的な評価場面における会話展開の分析を進める予定である.また,肯定的・否定的評価場面における話題の選択も分析し,日韓中でよく評価される事柄や評価されない事柄を分析し,その異動の結果と価値観を結びつけ考察する.その研究成果は,9月韓国の学会にて発表予定である. また,本研究の重要課題の一つである会話データ整備の成果として,日韓中120名の談話集を作成し,今後の研究にも活用する.
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次年度使用額が生じた理由 |
海外出張を次年度に変更したため,その旅費確保として,H29年度の予算に回す.
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次年度使用額の使用計画 |
2017年6月末に,フィンランドヘルシンキ大学にて開催予定のThe 20th Meeting of the International Circle of Korean Linguisticsに出張予定である.
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