本研究では,日本,韓国,中国の母語話者同士の会話に見られる対人評価行動を取り上げ,肯定的・否定的評価場面における特徴を談話レベルで分析し,3言語の類似点と相違点を明らかにすることを目的としている.最終年度の今年度では,継続分析および.研究成果をまとめることを課題として,研究を進めてきた. まず,分析においては,3言語の会話における肯定的評価場面を取り上げ,とりわけ,自分の得意分野と成功談を披露する自己肯定的な評価表出場面での会話の展開について分析,考察した.その結果,日本語の会話では外的基準に照らして評価をやりとりする他者認定の志向性が見られた.このような他者認定の傾向は,韓国語会話にも見られたが,日本語とは若干異なり,他者を自分と競い合う存在であり,評価基準としてみなす他者比較認定を志向していた.それに対して,中国語会話では,評価の中身や基準を外,すなわち他者に求めない,自己認定の志向性が見られた.今後は,肯定的評価と否定的評価場面,また自己評価と他者評価場面での特徴を分析し,日韓中の対人関係調整における志向性を総合的に明らかにしたい. 次に,3年間の研究成果をまとめる作業として,談話集と報告書を作成することができた.日韓中の60組計120名の全会話に対して文字起こしを行い『日本語・韓国語・中国語談話集』とまとめた.同じ条件のもとで収集した3言語の談話集であるため,今後の日韓中言語行動に関する研究の有効なデータとして活用できると考える.また,3年間の研究成果をまとめ,研究の概要,発表論文,資料の内容で報告書を作成することもできた.
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