研究課題
29年度は3年計画の研究の最終年度である。前年度の研究成果として、感情形容詞は、「sein+zu不定詞」構文、「sich+不定詞+lassen」構文、日本語の可能構文、意志構文と言った一定の種類のモダリティー構文と類似の振舞をしめすことが確認された。これらの構文はモノの属性を前景化しており、一種のindividual-level の表現になっているのである。この確認を受け、29年度は感情形容詞の叙述様式について調査した。出発点はある種の感情形容詞では付加語用法と述語用法で認容度に違いがあるという事実である。日本語においても、ドイツ語においても付加語用法は形容詞と形容詞が就職する名詞の結びつきは述語用法に比べ自由度が高い。述語用法における制限の強さは、文の形での叙述においては統語形式と意味役割の間にある連結規則がはたらき、項の間の関係がそれに制約されるからであると考えられる。さらに叙述用法における制限は、EXP項を主語とする場合は基本的にかからず、OBJ項が主語となる場合に起こることが確認された。そして、その場合叙述全体はOBJ項の恒常的性質を示す、すなわち、individual-levelのものとなる。また、ドイツ語のコーパス調査によれば、それらの文の主語は定でありかつコンテクストに結びついている。この分布は、OBJ項が主語となる際の意味構造の転換によって動機づけられていること、また、その意味構造は前述のモダリティー構文のそれとも同種のものであることを示した。以上の成果は12月にKlagenfurtで行われたオーストリア言語学会の大会で発表した。
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Jahrbuch fuer Internationale Germanistik, Reihe A, Kongressberichte
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