研究課題/領域番号 |
15K02537
|
研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
鈴木 孝明 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (50329926)
|
研究分担者 |
小林 哲生 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所, 協創情報研究部, 主任研究員 (30418545)
野村 潤 京都女子大学, 文学部, 講師 (10571474)
三浦 優生 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任助教 (40612320)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 言語発達 / 心の理論 / 心的状態語 / 日本語 / 補文 |
研究実績の概要 |
心の理論の発達に関わる要因として補文構造やwh移動が考えられる。日本語獲得児におけるこれらの要因を探るため、本年度は、心的状態動詞類の分析を行い、補文理解タスクとよばれるwh疑問文を使用した文理解課題を作成した。 日本語獲得児は心の理論の発達が遅いということに関して、その原因を心的状態動詞類の影響とする提案がある。これを探る第一歩として、本年度は、英語を対象とした先行研究に批判的考察を加え、日本語の暫定的な「心的状態動詞類リスト」を作成した。先行研究では心的状態語の定義、および英語と日本語の対応に不明確な点が多かった。また、個別の語彙に関する分類や動詞類の下位範疇化が考慮されることもなかった。本研究ではこれらの点を明確にするため、動詞類に焦点をあてて「参照物の不透明性」という基準に基づく語彙の選定、および、これらの動詞類が取り得る補文構造に関しての分類を行った。その結果、英語と比較して日本語では、母子会話において使用され得る心的状態動詞類の種類や数が少ないと予測された。CHILDESデータベースを利用した予備調査では、おおむねこれを支持する結果が得られた。次年度に予定している本調査では、さらに英語データベースとの比較においてこの点を詳細に調査する。 補文理解タスクに関しては、英語獲得児を対象とした調査で、誤信念課題の通過率との相関関係を認める研究がある。このタスクで用いられるwh疑問文では、補文の命題と主節の命題を区別する必要があり、この文構造の獲得が心の理論の発達と関係していると考えられている。日本語獲得児を対象としてこのタスクを実施するため、本年度は、課題に使用する絵の作成、および実験文とストーリーの作成を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の主な目的である理論的考察は、研究代表者が中心に進めている。また、コーパスを利用した自然発話調査や実験に関しては、研究分担者と蜜に連絡を取り合って、資料の選定、材料の作成、および手順の確認などを行っている。次年度に予定していた一部の調査は、予備調査として、すでに開始したものもある。これらのことから、全体としては、ほぼ予定どおりに順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
予定にしたがって、データベースを利用した自然発話分析と実験に基づいた補文理解課題を行う。前者に関しては、すでに予備調査を行っていることから、今後の手順はおおよそ見当がついている。分析対象とするデータベースを選定し、これまでの理論的考察に基づいた基準に従って分析を進める。また、実験研究に関しては、できるだけ早い時期に実験を開始したいが、まとまった時間がとれるのが8月になる予定である。この時期にある程度集中的にデータを収集して、秋以降に開かれる学会での発表をめざす。なお、研究分担者を通じて被験者の提供は確約されている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
以前から成果発表を行う予定にしていた研究会の開催場所が、勤務先に近かったため、予定よりも旅費がかからなかった。また、実験材料の作成を、研究分担者が個人の作業として行ったため、これに関する費用がかからなかった。また、ある程度まとめて購入した学会のプロシーディングスが、インターネット料金だったために、予算よりも安価だった。
|
次年度使用額の使用計画 |
今回、繰り越しが生じた金額の多くは、実験に参加する被験者提供のための費用として追加する予定である。
|