研究課題/領域番号 |
15K02539
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
岩田 憲幸 龍谷大学, 仏教文化研究所, 研究員 (90176553)
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研究分担者 |
矢放 昭文 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (20140973)
森 博達 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (90131292)
許 秀美 龍谷大学, 文学部, 講師 (50612826)
澤田 達也 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 招へい研究員 (20647599)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 近代漢語音韻史 / 対音資料 |
研究実績の概要 |
『蒙古字韻』(1308)についてその字音を中古漢語の音韻区分にしたがい分類整理し、電子データとして入力作業をおこない、完了した。 『西儒耳目資』(1626)については音節単位での字音データ入力を平成28年度中におえており、これをもとにしてえられた研究成果二件を2017年4月および同5月、いずれも中国で開催された学会において発表した。その趣旨をまとめてしめせば以下のとおり。1.『耳目資』が反映するのは官話音系である。ただし単一方言を基礎としたものではなく、変異体をふくんだものである。2.『耳目資』の成立には複数の韻書が関与しており、このことが同書の音系の性質を複雑なものにしている。 『洪武正韻』(1375)は近代漢語音韻史研究にとって不可欠の韻書であり、『耳目資』の成立におおきな影響をあたえている。ただ同書がしめす音韻体系には矛盾が多数みられ、あつかいづらいものであった。近年それまでの76韻本とはことなる80韻本が発見され、報告者は2017年になってその影印本を入手し、同書の小韻反切総表を作成した。それにより76韻本にみられる矛盾が80韻本ではいくつかの点で解消されることが判明した。これにもとづき『耳目資』の音系にかかわる問題についてあらためて検討しなおす作業をはじめた。 朝鮮文字資料『洪武正韻譯訓』(1455)については、独自にその字音データを入力することはやめ、『洪武正韻』小韻反切総表を作成する際、逐一参照するようにして利用することとした。こうすることで両書間の、また『洪武正韻』76韻本、80韻本間における音系上の異同について考察しやすくなるであろうと判断したためである。 唐話資料については、『三字唐話』(成立年不詳)の校訂に尽力した。字音(唐音)に比して語彙・語法上に疑問な点がおおく、2017年9月、上海同済大学の専門家をたずね不明な点についてただす機会をえた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最近『蒙古字韻』に関するあたらしい研究成果をもりこんだ著書が二三たてつづけに出版された。また新資料『洪武正韻』80韻本の発見があった。これらはいずれも本研究課題に直接影響をおよぼすものであった。他の研究成果を参考にすることで、また新資料を利用することで、それまでの研究内容を再点検する必要にせまられた。一部研究手法を修正し、あらためて別の角度から考慮しなおす必要にもせまられた。よって本研究課題の進捗状況は当初の予定より若干おくれることを余儀なくされている。
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今後の研究の推進方策 |
近代漢語音韻史に関する研究は近年急速に進展している分野であり、活発な研究活動がくりひろげられている。ところが基本的な問題において見解が一致しないこともめずらしくない。報告者のみるところ、その根本的な原因は言語データの「完全な(exhaustive)収集」がなされていないことにある。言語研究は言語データにもとづくものでなければならず、言語データにもとづかない言語研究はデータのまえに無力である。データの「完全な(exhaustive)収集」は本研究の出発点であり、本研究の質を保証するものである。今後の研究推進においてもこの点をつらぬいていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度、本研究課題と関係のある諸問題が論じられる学会がひらかれるためこれに参加したい。6月末または7月はじめ、北京語言大学において開催予定の官話資料に関するシンポジウムに出席し、近代漢語・官話に関し議論をかわしたい。また「中国音韻学研究第二十届国際学術研討会(西安)」(8月18日-19日、陝西師範大学)に出席し、『西儒耳目資』の音系について独自の見解を発表し、参会者の講評をあおぎたい。
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