29年度の研究業績は、専門書1冊、『現代漢語詞彙義系』という420頁からなる分析報告書1冊、論文6編となっている。3年間の実績は、書物は3冊、論文は15編以上。概ね当初の計画通りに、下記の内容で研究を完遂した。1、近代漢字語の二字化における要因、特に日本語による影響とその実態に関する分析;2、中国語に与えた日本語の影響についてサ変動詞、形容動詞を中心に考察した;3、日中同形語6300語から、サ変動詞、形容動詞を選出、漢籍、英華字書類、中国語近代語コーパス、日本語近代語コーパスで語源調査を実施。 (1)に関しては、これまでと異なる角度から分析し、「中国語近代二字語研究:序説」という長編論文(4万漢字)に纏めた。北京大学『中国文学学報』に採用され、初校完了。 (2)に関しては、次のような理論的枠組みを打ち立てた:中国語語彙体系の近代化に2つのハードルがある。一、新しい概念は、二字語で表現する;二、既存の概念を表す一字語は、同義の二字語(群)を獲得しなければならないこと。対して、日本語語彙体系の近代化は、一、新しい概念は、二字漢語で表現する;二、既存の概念を表す和語は、同義の二字漢語(群)を獲得しなければならないこと。 (3)に関しては、科学叙述を行うには、学術用語だけではなく、漢語系の動詞、形容詞の整備も不可欠であり、それが言文一致に繋がる結論を得た。実証する為、サ変動詞形容動詞について、3000語規模の語彙調査を実施した。
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