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2016 年度 実施状況報告書

受容バイリンガルの言語発達と言語使用

研究課題

研究課題/領域番号 15K02543
研究機関関西学院大学

研究代表者

山本 雅代  関西学院大学, 国際学部, 教授 (40230586)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードバイリンガル / 受容バイリンガル / 英語-日本語 / 言語使用 / 言語選択 / 言語発達 / 談話方略 / 異言語間家族
研究実績の概要

平成28年度も、これまでの研究方法を踏襲した「音声データの採取」→「文字データへの書き起こし」→「集積データの分析」という一連の作業に取り組んだ。
初年度からのデータ(一部)のこれまでの分析から、親子の言語選択・使用が常に同形の形態を保って行われているわけではなく、時間の経過と共に、別の形態へと変動している、すなわち、何らかの要因の影響により、ある方向を指して流動的軌跡を描いて変動しているらしいことが明らかになってきたが、平成28年度についても、この方向を持った流動的軌跡が継続的に描かれていることが示された。
具体的には、第1回目のデータ(#1)~ 最新データ (#93)までの13データについて、親子間での言語の選択・使用において統計的に違いが見い出されるか否かをχ2検定を用いて検証したところ、x2(48)= 526.983, p<.01との結果となり、有意な差が認められた。さらに、残差分析を実施したところ、研究開始当初から数年間は、親子の間での英語使用が有意に少なく、一方日本語使用が有意に多かったが、ここ数年前(子どもの年齢が9~10歳になる頃)より、親子間での英語使用が有意に多くなり、日本語使用が有意に少なくなるという逆転現象が生じていることがわかった。より詳細な分析から、これは子どもの言語使用の変化に応じて、母親自身のそれが変化したことによるものであると判断された。
本研究では、最終的に、子どもの言語使用(2言語の使用の形態)は親の方略によって制御されるというLanza (1997) による「子どもの言語混合に対する親の方略」(Parental discourse strategies towards child language mixing)と称されるモデルの妥当性を考察することになるが、上記のように、本研究の結果からは、その妥当性に疑義を主張できると考えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

「おおむね」としているのは、以下の問題点があったためである。

(1) 毎月のデータ収集にヌケが時折、見られるようになり、安定した定期的なデータ収集が滞りがちであった。
(2) 前年度と同様に、調査対象者の女児が反抗期の年齢にあり、録音での協力は続いているものの、面談での協力が得にくくなった。

なお、この他、平成28年度には、私事ながら、特殊事情があったことも報告しておきたい。平成28年度開始直後、怪我(鎖骨の骨折)をし、そのために海外出張ができなくなり、従来、年2回実施していた面談調査のうち、春の調査ができなくなった。また、秋の面談についても、調査対象家族とは、通常通り、面談日も取り決め、その日程の確認も繰り返し行ったのにもかかわらず、何か事情があったのか不明ながら、面談日間近に、突如、当該家族からハワイを不在にする旨の連絡を受け、秋の面談もできなくなった。そのため、この年度については、面談を通じての詳細な言語状況の聴取ができず、分析データと面談の内容とを付き合わせた形での分析・考察を行うことができなくなった。ちなみに、もう一方の家族については、通常通り、秋の面談を実施した。

今後の研究の推進方策

(1) データ採録が不規則になっている件については、その兆候が見え始めた頃より、当該家族にはデータ送付がないことを遠回しに伝えるようにしてきたが、今後は、直裁に伝えるような、より積極的な対策をとるようにする。
(2) 面談において、協力が得にくくなっている女児への対応については、面談の際に、女児の関心を引きそうな話題を中心に話を聞くよう工夫する。また、女児にとって、面談が負担にならない(飽きない)ように、母親への質問等に長い時間をかけず、要領よく話を聞くことができるようにする。たとえば、前もって尋ねる内容をアンケートのようなものとして作成しておき、それに前もって回答を得ておいた上で、面接では、不明なところだけを尋ねるような工夫をする。

次年度使用額が生じた理由

(1) 面談調査のための現地への出張を春と秋の2回を予定していたが、年度初めの4月に、当方の怪我(鎖骨の骨折)のため、治癒するまで海外出張を控えざるを得なくなり、海外出張が秋の1回のみとなった。そのために残額が出た。
(2) 本調査の主要調査対象家族からの協力は現在なお続いているが、音声データの採録が不規則となり、採録の回数が減ったために、音声データ採録の謝金、また文字起こしに係る費用の支出が減じた。
(3) 秋の海外出張では、従来通り、当方と当該家族の合意の上で、面談日を設定し、また、日程変更がないかを確認する連絡を繰り返し行ったが、当該家族に何らかの事情が生じたのか、面談日間近になって、面談日を含む日程でハワイを不在にする旨の連絡が届き、面談が実施できなくなった。こうした事情から、面談に係る費用の支出が不要となった(なお、もう一方の協力家族については、予定通り、秋の面談を実施した)。

次年度使用額の使用計画

上記の事情から、平成28年度には、主要調査対象家族との面談を一度も実施することが叶わず、そのために、面談を通じての詳細な言語状況の聴取ができず、分析データと面談の内容とを付き合わせた形での分析・考察を行うことができなかった。
ついては、平成29年度には、より綿密な面談調査を行うべく、また、当該家族の事情から再度、面談の機会を失うようなことがあっても、少なくとも1度、ないしは2度の面談の機会が確保できるよう、面談の機会を増やすことを考えている。
また、この家族については、平成28年度には、録音データの採取が不規則になりがちであったことから、定期的に採録することの必要性と重要性を、面談を通して理解を得たいと考えており、そのためにも、平成29年度には、面談の機会を失うことがないよう、面談の回数を増やすことを計画している。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] 受容バイリンガルの言語使用と言語環境:母親の言語使用の経年変化に焦点を絞って2017

    • 著者名/発表者名
      山本雅代
    • 雑誌名

      Language and Culture/『言語と文化』

      巻: 20 ページ: 17-31

    • 謝辞記載あり
  • [学会発表] 異言語間家族に育つ子どものバイリンガリズム ― 社会と家庭を考察の枠組みに考える2016

    • 著者名/発表者名
      山本雅代
    • 学会等名
      子どもの日本語教育研究会第1回研究会
    • 発表場所
      京都教育大学 (京都)
    • 年月日
      2016-12-04 – 2016-12-04
    • 招待講演
  • [学会発表] Bilingualism: Children growing up in a bilingual milieu2016

    • 著者名/発表者名
      YAMAMOTO, Masayo
    • 学会等名
      The 2nd symposium on bilingualism
    • 発表場所
      Osaka International School of Kwansei Gakuin (Osaka)
    • 年月日
      2016-04-29 – 2016-04-29
    • 招待講演

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公開日: 2018-01-16  

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