研究課題/領域番号 |
15K02544
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
尾鼻 靖子 関西学院大学, 理工学部, 教授 (60362141)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 役割理論 / 人称詞 / やりもらい / 語用論的意味 |
研究実績の概要 |
この年度では、前回の科研費の研究目的と重なって、ポライトネスに関する研究も引き続き行ってきた。主に論文執筆に費やされたが、参考文献などは新しいものにも言及し、また学会での発表も、ポライトネスに関するパネルを設定し8人でパネルディスカッションを行うという企画を立て、実行した。また論文を2本仕上げている。 新しい言葉の項目に関しては、データ収集は時間的な理由から多くはできなかったが、テレビのドラマおよび映画などからいくつかのデータを収集した。それらを分析し、項目別に分類し次のような研究の方向を定めた。 1.人称詞の変化がどのような心理的役割のシフトを表しているのかを調べる。人称詞は呼称も含めて考慮に入れ、同じ人物が他の同一人物に対して、文脈ごとに相手を示す言葉が変化することが多い。その変化が起こる状況を把握して、そこにどのようなrole-identitiesがシフトしながら現れるのかを分析している。しかし、データが限られた中での分析なので、次年度にはデータをもっと収集する必要があると感じている。 2.「~てくれる」「~てもらう」の語用論的機能とその使用における話者のrole-identityを探求する。この助動詞は単に恩恵を表すばかりでなく、不都合なことや、迷惑を表すこともあれば、尊大な感情をむき出しにするという変化に飛んだ役割を担っている。しかしその変化に富む解釈をまとめる中心となる要素を探す必要があると感じている。次年度においてもっとデータを収集し、これらの言葉のコアとなる要素を引出し、さらに話者のrole-identitiesがどんなものかを考察するつもりである。 上記の2点については、データ分析を行いつつ、関連参考文献を閲覧している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
代表者の家庭事情により10月から2月にかけて研究に携わることができなかった。今年度に限って大学での業務が増えた点も否めないが、主な理由は5か月間ほとんど研究に手をつけることができなかったという点である。延長を依頼する方法もあったが、1月からは研究にまた携われると思ったのであるが、結局3月末まで家庭事情が続いてしまったので予定通りに行かなかったというのが実情である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続いて、参考文献を閲覧する一方で、データ収集を本格的に行う。たとえば自然会話や会議などの収録をし、それを書き起こし、データ分析の対象とする。またラジオでのトークショウなども録音したり、映画、ドラマの録画も引き続き行う。研究対象は上記で述べたように、「人称詞」「やりもらい表現」であるが、その他に興味深い項目がデータから抜粋された場合にはそれらの項目にも手掛けたいと思う。 昨年度実施するはずであった、役割理論の専門家に話を聞き、代表者の拡大理論について議論したいと思っている。合衆国の大学を2件ほど回る予定である。 また、執筆途中の著書を仕上げたいと思う。これは当該研究の目的には述べていないが、今回の科研費の研究目的に沿うもので、その成果もあって、著書を仕上げる方向が決まったといえる。70%ほど完成しているので、この機会に出版につながるように努力したいと思う。
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次年度使用額が生じた理由 |
代表者の家庭の事情により、データ収集(録画および録音)に時間をかけることが不可能であったことが理由である。データ収集に伴う録画用の物品の購入をしていない、データ収集に際して参加者への謝金、大量のデータの書き起こしを業者に依頼することなど、それへの研究費の使用が伴っていない。また役割理論の専門家に話を聞きに行く旅行もできなかったし、あまり研究が進んでいないために海外研究協力者に日本に来てもらって話し合いを持つことも意味がないので、次年度に持ち越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度には、昨年度にできなかった項目をすべて行うつもりである。特別研究期間にあたるのでかなり自由に研究行動ができる利点を生かして、軌道に乗せるつもりである。まず、役割理論の専門家にアポを取りディスカッションを行ってくる。その間にデータの収集に専念し、データはすべて書き起こしをする(業者に依頼)。 海外研究協力者との連絡も計画通り取り、日本への旅行計画を進める。また、2016年度は学会でこれまでの成果を発表するつもりである。
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