研究実績の概要 |
ポイライトネスや他の言語現象を分析する際に、シンボリック相互作用論(Symbolic Interactionism:以下SI)を適用するのが当該研究の目的である。SIは社会学で大きい反響を呼んでいる「役割理論」のひとつで、「インターラクションの中でrole-identityなどが現れる」という主張が言語分析に役に立つと思われる。これまでの研究論文をまとめて、Japanese Politeness - An Enquiryというタイトルの著書を執筆している。ポライトネスに関しての集大成となるべき著書で、すでにイギリスのRoutledge出版社と契約を結んだ。来年度には仕上がる予定である。内容は従来のポライトネス研究に触れながらも、ポライトネスの定義に使われる要素(evaluation, social practice, social norms, involvement and independence)がどのような過程を経てその要素と成り得たのか、をdiachronic(歴史的なプロセス)に説明したり、敬語を「わきまえ」とするよりも、インデックスとして捉えるべきであると主張したり、と独自のスタンスを全面に出している。日本語の例の分析には上記のSIを適用している。 また敬語使用によるアイロニーについて、海外研究協力者とともに学会で発表し、現在論文を執筆中である。ドラマの分析にかなりの時間を要したが、、従来アイロニーの生起となる「命題」こそが中心となってアイロニーを生むと主張されていたが、敬語使用のアイロニーにはそのような命題がなくとも、つまり話者の意図する方向と実際の発話に矛盾(命題)がなくともアイロニーを生みだすことが可能である、という発見はこれまでの研究には見られなかった点で、これからも研究を続けたいと思っている。
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