本研究では、健常児の発達段階などにおいて認められる、格助詞以外の情報(語順など)に基づく言語理解を「方略的言語理解」と呼び、その背景要因としてどのようなものがあるかを明らかにしようとするものである。このような方略的言語理解は、幼児だけでなく、失語症者や難聴児でも観察されることが明らかになっており、方略的言語理解についての知見は、言語聴覚療法の臨床において、大きな意義を有するものと考える。また、第二言語習得においても認められることから、言語教育の面でも意義を持つと思われる。加えて、健常児、失語症者、難聴児、第二言語習得者など、異なる対象者においても同じ因子によって方略的言語理解が生じているのか否か、異なる要因が存在する場合には、なぜ異なるのかといった問題についても検討する必要がある。 平成29年度は、熊本地震の影響、ならびに、対象となる症例の選定の問題から延期になっていた失語症者等の検討を開始した。その際、健常児に関する研究代表者の研究により明らかになったいくつかの要因について検討している。現在も引き続き、現在成果報告に向けて準備中である。一方、失語症等の脳損傷者の言語運用を検討する中で言語理解以外の点においても様々な方略が見られ、それらに関する知見も多く得られている。脳損傷者の呈する種々の言語処理方略に関しては、今後さらに研究を進めていきたい。 これら以外に、国内外の新たな知見を得るための書籍・資料の購入を行うとともに、学会等への参加を通して国内の研究者と意見交換を行った。
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