日本語史資料として注目されてこなかった往来物資料を活用し、海域交流という視点から、日本語変遷とその要因の解明が研究目的である。本研究期間においては、北陸地域(石川・新潟・富山)に焦点を絞って、往来物資料の所在の有無を確認し、該当資料の書誌的調査と整理分類をすすめた。東北地域での調査結果をふまえて、それぞれの地域ごとの相違性や共通性について明らかにし、地域間における影響関係や言語文化の伝播状況について分析した。 2015年度は、富山県立公文書館および高岡市立中央図書館の往来物資料について調査を実施し、分類整理を行った。研究成果として拙稿2報、特に資料を利用した日本語研究として形容詞「おいしい」の一般語化について考察検討し、変化過程を解明した。中国延辺で開催された国際シンポジウムにも参加、研究発表した。2016年度は、新潟地域を調査対象とし、長岡市立互尊文庫所蔵の資料について調査と分類整理を行った。「味覚表現の「おいしい」と「うまい」」、「漢字表記「名所」をめぐって」と題する研究成果を公表し、日本語資料としての有用性についても言及した。 2017年度は、新潟県立図書館図書館所蔵の往来物資料調査を実施し、多数の未公開資料を発見した。加えて石川県での調査準備を行い、研究成果として長岡市立中央図書館所蔵の往来物についての拙稿を2報を公表した。2018年度は、石川での調査を続行しつつ、新潟での調査結果の拙稿2報公表、韓国の東亜大学、台湾大学、中国文化大学でも特別講演を行った。 2019年度は、石川県立図書館所蔵の往来物資料について2報拙稿をまとめ、富山、新潟、石川の北陸地域の資料の偏在、出版文化と言語変化の影響関係等を分析解明した。研究成果は、中日韓朝言語文化比較研究国際シンポジウムで基調講演(招待)し、台湾での国際学会でも研究発表を行って研究を紹介するなど海外への普及にも努めた。
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