研究課題/領域番号 |
15K02557
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
半沢 康 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (10254822)
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研究分担者 |
白岩 広行 立正大学, 文学部, 専任講師 (30625025)
武田 拓 仙台高等専門学校, 総合工学科, 教授 (20290695)
本多 真史 奥羽大学, 歯学部, 講師 (70806158)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 被災地方言の記録 / 危機方言 / 福島県浜通り地方 |
研究実績の概要 |
周知のとおり,東日本大震災は福島県にも甚大な被害をもたらした。とりわけ東京電力原発事故によって避難を強いられた相双地方の自治体の中には,いまだに全町避難を強いられているところもあって,地域コミュニティの存立自体が危ぶまれる。また同時にその方言についても衰退が懸念されるところである。こうした状況に鑑み,研究代表者は文化庁からの事業委託を受け,2012年度以降,福島県内被災地の方言談話資料を収集する調査に取り組んできた。しかしながら被災地が広域に及ぶため,すべての地域の方言について十分な量の方言談話資料を収集するには至っておらず,さらなる調査の継続が不可欠である。本研究の目的はこれら福島県相双地方(相馬,双葉地方)方言の記録・保存に向けて,可能な限り多数の方言談話資料を収集し,その資料をもとに当該方言の基礎的,総合的な記述を進めることにある。 2017年度は引き続き被災地域の方言談話資料を収集するとともに,その資料に基づく記述・分析を進めた。2016年度同様,避難指示が解除されて住民の帰還が始まった地域に赴き,先駆けて地域に戻られた高年層の方々からお話を伺って方言談話資料を収集した。地域に戻られた方の多くは,ご家族が避難を継続していたり,近所の方々がまだ戻らなかったりして,普段お話をする機会が減ってしまっている方も少なくない。そうした方々に母語である方言でお話をしていただくことで,インフォーマントへの「傾聴支援」にもつながるよう,調査の際は心を砕いた。 また,被災地では住民の帰還とともに学校の再開も進んだ。2017年度は地域で再開された中学校へ伺い,地域の方を巻き込んだ方言教育実践を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2017年度は避難指示解除となった自治体の協力を得て,多くの談話資料を収集することができた。さらに,そうした資料を活用しての学会発表や論文発表にも至った。 一方で被災自治体の中には,避難指示解除後も住民の帰還が捗らず,いまだ数%の帰還にとどまったところもある。こうした地域では自治体側の受け入れ態勢が整わず,やむを得ない事情により,調査や授業実践が十分行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況にも記した通り,現時点で調査等が不十分な地域が残っている。こうした地域についても,ほとんどは2018年4月に小中学校が再開され,それに伴って住民の帰還も進むものと期待できる。2018年度はこうした地域を中心に,引き続き調査活動と小中学校での授業実践を継続する。また最終年度にあたり,研究のまとめとして,国際学会も含めた各種学会での発表や,成果論文の刊行に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
進捗状況にも示した通り,被災自治体の中には,避難指示解除後も住民の帰還が捗らず,いまだ数%の帰還にとどまったところがあって,こうした地域では自治体側の受け入れ態勢が整わないためやむを得ず,調査や授業実践を見送った。こうした地域についても,ほとんどは2018年4月から小中学校が再開され,それに伴って住民の帰還も進むものと期待できる。そこで研究期間を1年間延長し,これらの地域で引き続き,調査活動と小中学校での授業実践を継続する。次年度使用額はこの調査費用に充てる。さらに研究の最終年度にあたり,研究のまとめとして,国際学会も含めた各種学会での発表や,成果論文の刊行に取り組む。そのための旅費や分析費用として使用する。
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