研究課題/領域番号 |
15K02559
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
高橋 久子 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (40213665)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 往来物 / 古往来 / 新撰遊覚往来 / 新撰類聚往来 / 中世の語彙 / 中世の漢語 / 漢語の表記 |
研究実績の概要 |
本研究の主たる目的は、室町時代の往来物である『新撰遊覚往来』と『新撰類聚往来』の両書について、日本語学的研究を多角的に推進することである。そのための基礎的作業として、本年度は、両書のテキストの収集と整理を主に行った。 まず、『新撰遊覚往来』の諸本として、謙堂文庫蔵天文13年写本・東京大学文学部国語研究室蔵本・東北大学附属図書館蔵本・内閣文庫蔵本・高野山大学附属図書館蔵金剛三昧院本・叡山文庫蔵本・謙堂文庫蔵柏原屋佐兵衛版・学習院大学図書館蔵本・早稲田大学図書館蔵本を収集した。諸本の異同を調査し、古本系・流布本系のほかに、両者の中間本と言えるテキストが存在することを確認した。上記のうち、高野山大学附属図書館蔵金剛三昧院本・叡山文庫本が中間本に当たる。また、高野山大学附属図書館蔵金剛三昧院本は、前半部が流布本系の本文を持ち、後半部が古本系の本文を有していることも確認できた。これらはテキストの系統に関して、本年度確認された新知見である。 次に、『新撰類聚往来』の諸本として、東京大学文学部国語研究室蔵天正4年写本・内閣文庫蔵慶安元年版本を収集した。前者は、善本であるが、上巻のみの零本である。そこで、底本としては、慶安元年版を選び、翻字本文を作成するとともに、本文の校訂を行い、索引を作成しつつある。 全体として、両書について、それぞれ、テキストの校訂、翻字の作成、難解な語の調査、索引の作成など、基礎的な作業を行っている段階である。 また、『新撰遊覚往来』と『新撰類聚往来』に深く関係する、古辞書を中心とした中世の語彙・表記については、従来より研究を進めているが、本年度も多数の研究成果を発表しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の中心的課題である『新撰遊覚往来』と『新撰類聚往来』の諸本の収集と整理は、順調に進展しており、次年度の研究の基礎とすることができる。それに付随して、諸本の系統や語彙の調査、索引の作成についても、相当程度の成果を上げている。
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今後の研究の推進方策 |
研究の現状に鑑み、進展に問題がないため、当初の計画に従って今後も研究を続ける予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
収集すべき資料のうち、古書で探求したものの、まだ入手できなかったものがあるため。また、図書館蔵の諸本のうち、必要がないことが判明したものや、写真の入手が不可なものなどがあり、経費が不要になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
往来物の研究は、室町時代の諸文化の研究を必要とするため、予定より広い範囲で資料(書籍)の購入にあてたい。
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