『新撰遊覚往来』と『新撰類聚往来』は、『庭訓往来』に類似した形態の、室町時代を代表する大部の往来物である。当時の文化的教養を体系的にまとめており、中世の言語文化を知る基礎資料となる。にもかかわらず、従来は学術的に信用できるテキストすら存在せず、内容の検討も不足していた。それが文化史的資料として使用されることはあっても、日本語学的な検討を経ていないテキストを使用しては、学術性に限界があろう。この両書を日本語学の立場で研究することで、テキストの系統を明らかにし、正確なテキストを作成し、表記・語彙の検討を行った。結果として、古辞書との関係も含めて、中世の日本語と日本文化に関する知見を深めた。
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