研究課題/領域番号 |
15K02562
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
釘貫 亨 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (50153268)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 活用助辞 / 複語尾 / 意志・推量ム / 感情形容詞 |
研究実績の概要 |
当年度は、前年度の研究実績を踏まえて平安時代語の願望表示形式であるマホシの成立過程をより詳細に資料学的に精査した。マホシは、元来奈良時代語の願望表示の文脈であるマクホシが文法形式として成熟した標識たる音縮約を生じて、平安時代語初頭に離散的な文法形式として生成した。奈良時代語の他の願望表示と異なってマクホシ>マホシの系統が歴史的耐久力を保持した要因として、奈良時代語の話し手の精神的表示ムのク語法と感情形容詞の組み合わせ(懸けまくもかしこし、言はまくもゆゆし等)の一環として、マクホシが位置しており、その結果体系的表示法として安定的に使用されたことがあげられる。当年度の研究過程において、この種のマク+感情形容詞のサンプルを悉皆的に調査、採集して、古代語における話者願望表示の正確な位置づけを行った。その研究結果は、既に論文化を実現して、2017年度中に公表される予定である(『国語語彙史研究』2018年初頭刊行予定)。 本研究と関連しながら並行して行ったこととしては、古代語の文法体系を根本から変革した要因としての動詞増殖という観点から著書『古代日本語の動詞増殖をめぐる通時論(仮題)』の準備作業に取り掛かった。この研究は、申請者の二十年来の古代語文法史研究の集大成となるべきものであって、動詞増殖の観点から上代語の活用助辞リ、タリ、ナリの成立過程とその必然的論理を再現した。従前の申請者の研究ではこれら三形式が同時期に成立したとしてきたが本研究では若干それを修正して、タリ、ナリの成立期を天平期に絞り込んだ。本研究の主要課題であるマホシ成立過程も中核的要素をムのク語法とするものであるが、今後取り組むべき課題は、この著書のコンセプト内に包摂されているので、併せて遂行することが合理的であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究成果は、既に論文化して査読を通過している。また、本研究に至るまでの過去二十年間の古代語文法史研究に関する著書をまとめるべく、具体的な作業が始まった。本研究の一連の成果は、この著書に含まれる。
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今後の研究の推進方策 |
当年度の研究計画に従って本幹の研究を進めながら、上記の古代語文法に関する著書の準備を鋭意進めて行く。著書のモチーフは、古代語の文法体系を根本から変革した要因としての動詞増殖という観点から、古典古代語において代表的とされるいくつかの活用助辞の歴史的成立過程を解明する。本研究は、この著書の計画の中に包摂されている。 著書の完成を本研究の年限内に実行できることを期待している。
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