従来日本語文法論および日本文法史の分野において、動詞の形容詞転用すなわち分詞用法の解明が等閑に付される傾向があり、本研究は古代日本語における分詞用法が「行く水」「咲く花」「立つ鳥」等の無標識の絶対分詞を起点にして、「咲きたる花」のような過去分詞、「咲ける花」のような現在分詞に展開する定率関係を構成することを明らかにした。現在分詞と過去分詞に対立する欧語文法に対する日本語文法の特徴を解明した。日本語の分詞用法の発展は、主として万葉集や源氏物語を中心とする文芸作品における表現の発達を通じて実現したと考えられ、日本文芸史との有機的な連関を解明するための有意味な材料を提供しうるものである。
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