研究課題/領域番号 |
15K02568
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
浅田 健太朗 島根大学, 法文学部, 教授 (50346045)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 日本語史 / 日本語音韻史 / 音価 / 声明 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度までに収集した声明譜から特に言語的な要素と関わりの深い符号を抽出し、どの資料にどのような符号が現れるかを一覧表にして整理した。さらにそのうちいくつかの符号について、その分布や機能についての検討を行った。特に注目したのは、真言宗南山進流の講式譜本において、母音が連続する詞章に使用される「ワル」類と「合」類の符号である。それらが使用される条件やアクセントとの関係を、現代の講式誦唱も参考にしながら考察を加えた。 「ワル」類は従来指摘されてきたように、主に母音連続iuに対して使用され、母音を融合させずに([ju:]でなく[iu」として)唱えることを指示する符号であり、一方で「合」類は、主に母音連続ouに対して使用され、その機能は必ずしも明らかではないが、現代の講式誦唱を聞くと、おおむね[o:]でなく[ou]の部分に多く付されており、非長音化の記号と見做すことが妥当であると考えられる。また両符号とも、漢語アクセントとの関わりが指摘でき、「ワル」類は低平調(平声・入声・フ入声)の母音連続に主に使用されるのに対して、「合」類は低平調のほかに上昇調(去声)の母音連続にも使用されていることが観察された。また「合」類に関しては、低平調の場合も徴角の節博士が付されている場合が多く、音程の変動が見られる部分に「合」が付されやすいことが明らかになった。 また、講式譜本の促音・撥音部分の詞章に関して、節博士を配当するものとしないものがあることに注目して、用例を収集し、整理を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
勤務先における業務の増大などの理由で研究に割くことのできる時間が減少したため、用例の整理、分析に遅れが生じた。そのため研究期間の延長を申請し、許可を得た。
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今後の研究の推進方策 |
研究の範囲に関して、当初は濁音と関係の深い「入」「ノム」などの符号も取り上げる計画であったが、収集できる用例数が少ないため対象から外した。さらに分析を進め、声明譜本から得られる手がかりから日本語の長音等についてどのような推定ができるかを考察していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究期間の変更に伴い、必要に応じて参考資料の購入や資料の複写、用例の確認のための調査旅行を行うため。
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