研究課題/領域番号 |
15K02570
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
京 健治 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (60284014)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 並列表現 / 因由表現 / 文法史 / 古典語終止形 / 「不十分終止」用法 |
研究実績の概要 |
日本語並列表現史を記述する為に、平成28年度では〈研究論文〉3編〈研究発表〉1編の成果を得た。 〈研究論文〉(1)「並列表現「~ツ~ツ」の消長に関する考察―動作作用の並列表現の推移補遺―」、(『西日本国語国文学』第3号,平成28年7月,44~57頁)、(2)「接続助詞「たり」の展開覚書―江戸期の用法を中心に―」(『国語と教育』41号,平成28年11月,216~228頁)、(3)「古代語に於ける〈終止形による条件表現〉に関する考察―院政鎌倉期を中心に―」(『岡大国文論稿』第45号,平成29年3月,1~13頁)、〈研究発表〉(1)「文法史と「不十分終止」―近代語に於ける古形残存の経緯―」、(平成28年度長崎大学国語国文学会,平成28年11月26日,長崎大学教育学部) 研究論文(1)は「~ツ~ツ」の消長を記述し、現代語に見るような慣用表現となる過程を追ったもの、研究論文(2)は、接続助詞「たり」の展開に関して、特に用法の発達が顕著であった江戸期の様相を記述したものである。研究論文(3)及び研究発表(1)は、接続助詞「し」成立以前の表現形式であった古典語終止形による「不十分終止」用法に関する成果であり、当該表現の特質を示しながら、文法史的位置付けを試みたものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
28年度では、【研究実績の概要】にも示したように、研究論文3編と口頭発表を行った。 接続助詞「たり」の意味用法の展開に関しては、その詳細な記述はこれまでのところ、十分ではなかったように思われる。また、「たり」と並行して動作作用の並列に与っていた「~ツ~ツ」の消長に関する研究も同様の状況であった。この両者の消長を見ることにより、並列表現史の一端を明らかにすることができたといえよう。また、古典語終止形による「不十分終止」用法に関しても、その表現性の特質及び並列表現史上の位置付けもある程度行うことができたものと考えるからである。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度も引き続き、並列表現に与る諸形式を対象として研究を進めることにする。 並列表現史を記述する上では、まず、個々の表現形式の展開を記述することが必要であろうと考える。今年度は、研究の対象とした選択的並列表現「~なり~なり」「~なりと(も)~なりと(も)」の展開を明らかにする。個別の表現形式の展開を見据えつつ、選択的並列表現といった枠組みの中での史的変遷を描く予定である。さらに、前年度までの研究成果を踏まえた上で、並列表現史の一端を記述することにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果を発表するために、旅費を申請したに留まり、当初、申請した研究図書購入に関しては、文献の選定などに苦慮し、購入することができなかったからである。
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次年度使用額の使用計画 |
古典籍(特に室町期から近世期)及び関連する研究書については、研究内容の進展において、必要なものであるため、次年度早々には、入手すべく手続き等を行う予定である。
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