研究課題/領域番号 |
15K02571
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
岩城 裕之 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 准教授 (80390441)
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研究分担者 |
今村 かほる 弘前学院大学, 文学部, 教授 (50265138)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 痛みの質・種類 / オノマトペ / 程度副詞 / 患者の要望 |
研究実績の概要 |
1 痛みを表す語彙の記述:痛みについて、「痛みの程度」「痛みの質・種類」の2点を柱に,痛みを位置づけることとした。程度についても質・種類についても、いずれも語彙化しているものよりも、オノマトペ等の副詞を伴う表現が多いことがわかった。すなわち、「にがる」(体の深部からの鈍痛、自発痛)などの形式よりも、「ずきずき+痛む」のような形式が多く、「ずきずき」といった副詞の分析が中心となった。さらに理学療法の現場では、「痛みの程度」の把握は数字や絵記号で表現することが多いことがわかったため、現場に即したツールの開発にあたっては、「痛みの質・種類」を中心に行うことになると考えられた。 2 理学療法士の方言理解および患者の意識(患者の要望)など:昨年度実施した理学療法士へのインタビュー調査によって、日常の雑談や生活に関すること(住居の構造、生活パタンなど)に出現する方言を理解したいというニーズを把握できた。 そこで今年度は主に患者が理学療法士に対して方言理解をどの程度求めているのかを調査した。その結果、対医師、看護師、薬剤師に比べ高い割合で方言理解を求めていることが明らかとなった。並行して行った台湾の調査においても、同様の結果が得られた。数ある医療職の中でも、理学療法士は方言を理解しておく必要が高い職種であるといえる。海外との比較結果からも、この傾向は一般的なものである可能性が高いと考えられた。 3 理学療法士に対する方言の手引きの開発:上記の事情をもとに、手引きに採録する事項について考察を行った。持続可能な公開方法、使いやすいツールとするための公開方法などについては引き続き考察を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
痛みを表す語彙の記述は、現場の理学療法士の事情と当初の計画が合わない点があったため、完全な形での調査は十分に行えているとは言えない。ただ、現場のニーズ調査からは、医師などよりも幅広い分野の方言情報が必要であることが明らかとなった。そこで新たに行った患者へのアンケート調査及びその国際比較において、一般的と思われる傾向が見えてきた。現場に即した形での手引きの開発に向けて必要な情報は集まってきたため、研究全体としてはおおむね順調であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
1 問題が大きいと思われる地域として、沖縄の離島方言を文献等で再録したため、痛みの質や程度を表すオノマトペを含めた表現を精査する。また、全国の方言について一覧表、データベースを作成し、医療者に向けた記述の完成を目指す。 2 上記成果を公開する方法およびその利用法について考察する 3 患者のニーズについても引き続き調査を進め、理学療法士と患者双方の状況を明らかにし、理論化をはかる
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究および本研究以前の医療と方言に関する研究について、中華人民共和国での研究発表の機会があり、研究協力者を含めて出張の予定が合ったが、1名が別経費で出張となったため、確保していた旅費の一部が使用されないままになったこと。 また、痛みを表す俚言が各地方であまり確認できず、副詞(オノマトペを含む)の調査が中心となったため、調査企画そのものを変更する必要が生じ、それに時間がかかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
新たな調査企画の元、当初予定の調査地点において痛みの表現に関わる副詞等の調査を行う。当初予定の地点で実施するため、今年度は昨年度予定の地域も含めた臨地調査を実施する
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