研究課題/領域番号 |
15K02576
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
篠崎 晃一 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (00206103)
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研究分担者 |
中西 太郎 目白大学, 社会学部, 専任講師 (30613666)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 言語行動 / 言語的発想法 / 変化 / 地域差 |
研究実績の概要 |
本研究では、いまだ実態解明が十分ではない、いくつかの場面の言語行動の使用実態の地域差を、先述の観点を重視して記述し、その記述資料をもとにして、言語行動の地域差を生む要因について明らかにするとともに、言語行動の変化のモデルを構築することを目的としている。 この研究を進めることで、言語行動の記述手法を確立し、他言語の言語行動を扱う研究も容易になる。他言語と対比することで、日本語の言語行動の特質をより深く明らかにできる。 本事業の研究実施計画では、平成29年度は、Ⅰ.言語行動使用実態の解明とⅡ.言語行動変容の考察を予定していた。Ⅰ.言語行動使用実態の解明については、これまでに十分な質・量が集まっていない地域(関西、中国、四国地方)でアンケート調査を行った。また、Ⅱ.言語行動変容の考察については地理的動態の考察と世代差の考察を軸としていたが、前者については、言語行動の地域差に都市規模の差が関与していることを解明し、後者については、世代差が社会人か、学生かという社会年齢差に大きく起因していることを明らかにした。また、いくつかの言語行動の変異を軸として、大局的な地域差を導く言語行動の地理的変異導出モデルを提唱するに至った。 一方で、導き出した全国的な地域差の背景として、言語行動への意識の差が関与しているかもしれないとの仮説を構築し、新たに、言語行動への意識の差を問うアンケートを関西、関東、中国、四国地方で実施することに着手した。この新たな課題としてのアンケート実施、回収及び分析作業に伴い、言語行動の変化モデル導出に至る従来の計画を見直す必要が出てきた。 さらに、これらの調査の成果と研究の成果を、随時Webサイト(http://disasterlinguistics.jimdo.com/)上で更新し、発信する取り組みを継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
回収アンケートの属性面でのバランス調整などの未達成の課題はまだあるが、すでに得たデータをもとに言語行動の差と都市規模の差の関与、世代差の背景としての社会年齢差という概念の解明、大局的な地域差を導く言語行動の地理的変異導出モデル提唱など、計画の通り、一定の成果を挙げているため、概ね、当初の研究進行予定に値する成果を達成できていると判断した。 一方、地理的変異の背景要因の仮説解明のため、言語行動への意識に関するアンケートを新たに実施することになったため、今後の計画の見直しを図る必要が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、1、2年目に、回収に偏りが生じた地域に重ねて依頼に赴いて回収率を上げたり、フォローアップのための現地調査などを行い、変化のモデル構築に十分な量と質のデータを得る。具体的な対象地域としては、c.準未発達地域(九州・沖縄地方)に重心を置き、高年層を対象としたアンケート調査を実施する。高年層100名の回収を計画している。また、言語行動の意識調査を続けて実施し、東北地方や九州地方を中心に、各地域100名ずつを目標にしてアンケート調査を実施する。 さらに、学会発表を通して成果公開を行うとともに、その機会を利用してアンケート実施協力者を募り、回収率の向上を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたアンケートの実施にかかる費用(通信費、印刷費、謝金など)について、アンケート協力者の無償での協力により、見込んでいた費用が大幅に削減できたため余剰額ができた。 さらに、アンケート入力にかかる作業も、当初考えていた以上に効率よく進めることができ、作業者への謝金の面でも余裕ができたため余剰額ができた。
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