本研究では、いまだ実態解明が十分ではない、いくつかの場面の言語行動の使用実態の地域差を男女差、世代差、都市構造差の観点を交えて記述し、その記述資料をもとにして、言語行動の地域差を生む要因について明らかにするとともに、言語行動の変化のモデルを構築することを目的としている。 この研究を進めることで、言語行動の記述手法を確立し、他言語の言語行動を扱う研究も容易になる。他言語と対比することで、日本語の言語行動の特質をより深く明らかにできる。 本事業の研究実施計画では、平成31年度は、これまでにデータ収集に偏りのあった地域のアンケートを実施し、それらの偏りを一定程度解消したデータをもとに、言語行動の変化モデルを確立することを予定していた。最終年度までに収集したアンケート調査の分析結果から、言語行動の地域差に、世代差の面で、社会人か学生かという社会年齢差が大きく影響していることを明らかにした。また、これまでに得たデータの中から、「発言性」や「配慮性」など、地域ごとの傾向をまとめる一定の観点を見出すに至り、それらを総合した言語行動の変化モデルの構築の手法について提案を行うことが出来た。 さらに、ある種の言語行動には、人口密度から見た都市化の度合いと回答傾向の相関が見られることが分かり、今後の言語行動の地域差の研究に都市構造差の視点が欠かせないことを提言するに至った。 そして、これらの調査の成果と研究の成果を、Webサイト(http://disasterlinguistics.jimdo.com/)上で発信する取り組みも継続している。
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