本研究は、平安時代の語彙に文体的な層状構造が存し、その文体的な層は、意味的な層に基づくことを解明することを目指す。 まず、『今昔物語集』と和文資料及び漢文資料とのパラレルコーパスを作成し、相互で対応することが多い語の対を抽出することで、語彙を3つの層に分けることができた。また、『日本語歴史コーパス』なども用いることで、平安時代の語彙には、5段階の文体的な層を確認することもできた。これらの各層間で対立する語の意味・用法を分析すると、そこに意味的な対立を認めることができた。 これらのことから、文体的な層状構造は、意味的な構造に基づいていると考えることができた。
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