これまでの2年間に実施してきた種々の情報メディアにおける言語資料や、国語辞書・漢和辞典、用字・用語集・書体字典のたぐいに対する検討、そして専門家や使用者などへの意見聴取、聴き取り調査などによって明らかとなった字体・字形に関する実態と使用者・受容者の意識、それらの背景に基づき、当該調査研究の補完を行った。そして、それらをふまえて種々の分析と考察の取りまとめを実施した。日本語を表記するうえで重要な役割を果たす漢字の字体・字形について、2010年に改定された内閣告示・訓令の「常用漢字表」や、新聞・放送などマスメディアにおける各種の表記に関する規則・用字についてのルール、さらに辞書類などとの関わりについても、多角的に分析を加えた。 それらの結果を踏まえたうえで、最終的に字体・字形という概念について具体例を当てはめて掲げつつ分類と整理を行った。それとともに、政治的条件、経済的条件、物理的条件や生理的条件、、心理的条件、言語的条件など種々の因子のために、問題の起こりやすい字体・字形と、その性質についても改めて検討を行った。そして、上記の種々の検討を通して解明されたもろもろの点に基づいて、今後の日本語を表記するための漢字の在り方についても考察を行った。 それらの主な点、重要な事象などについて、学界だけでなく一般社会などへの提言を含む研究成果を、論著や口頭発表などによって広く公表し、学問研究の向上を図るとともに、社会に還元し、文字使用者の日常の言語・文字生活に対する一層の寄与に努めた。
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