研究課題/領域番号 |
15K02584
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研究機関 | 別府大学 |
研究代表者 |
松田 美香 別府大学, 文学部, 教授 (00300492)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 方言談話 / 大分県大分市 / フィラー / アンタ / 依頼 / 申し出 / 挨拶 / 文末詞 |
研究実績の概要 |
5月に日本方言研究会第100回記念大会にて、大分方言談話に頻出するフィラー、アンタ、オマエ類の出現箇所とイントネーションとの関係についてポスター発表した。二人称代名詞のフィラーについては、先行研究が少なく、イントネーションと絡めて研究したものはこれまで少なかった。文中(話の途中)では、本来のアンタの頭が高いアクセントが消されて平板なイントネーションが実現され、文末(会話末)では本来のアクセントが生かされて下降イントネーションになる。そこで、文中のアンタは「話はまだ続いている」ことを伝え注意喚起する機能、文末は「話は終わる」ことを伝える機能をしていると考えられ、話し相手に話すタイミングを伝える「配慮」の役割があることを明らかにした。また、フィラーとしてどこにでも差し挟まれるようなものから、大分方言のアンタナーやタナーという特徴的な終助詞(文末詞)となっていったことを示した。8月27~28日に、大分市稙田地区の中学生・高年層の談話調査を行った。ほぼ同年の男女2名ずつを、男A-男B、女A-女B、男A-女B、女A-男Bの組み合わせで、「体育祭の審判を代わってもらう(朝の挨拶、AからBへ依頼)」、「町内の当番をBが代わってやる(申し出、感謝の表明)」、「近所で出会って道で立ち話して別れる(昼の挨拶、行き先を尋ねる、別れの挨拶)」の3つの場面会話を録音した。引き続き11月28日に同内容で大分市出身の大学生調査を行った。そのデータを文字化し、エクセルファイルにターン(発話担当者の切り替わり)毎に入力した。また、それに対応する録音資料を切り分け、整理した。 平成28年度には竹田市での3世代調査を予定し、同様に文字起こし等を行う。また、地域おこしと方言についてのシンポジウムを別府大学で平成28年度後半に開催することを着想し、連携研究者・研究協力者と別府大学地域社会研究センターにて賛同を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では、2015年度は大分市の高年層と中学生を調査する予定であった。それは計画通りだったが、内容については再検討し、予定していた「命令・禁止」「勧誘」「謝罪」を外し、代わりに「申し出」を加えた。大分市大学生調査ができたことで、調査数は予定以上行うことができた。 また、当初はホームページにて研究成果の公開を予定していたが、より直接的に地域貢献できる方法としてシンポジウム形式のほうが適していると考え、本調査の途中報告と地域貢献と方言研究の接点についてのシンポジウムを筆者と連携調査者、調査協力者、別府大学地域社会研究センター関係者で行うことを決めた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、大分県内の2地点以上の比較研究を計画しており、現在は大分市の1地点のみが完成している。もう一致点のデータが揃ったところで、地域差・世代差・地域差の3つの観点からの違いと共通点を整理して、学会等で発表する予定である。(来年度春を予定) 今年度の春に竹田市大学生、夏に竹田市高年層・中学生の調査を予定していたが、熊本・大分地震の影響で、春の大学生調査が後ろ倒しになる可能性がある。その場合、比較的揺れの少なかった宇佐(安心院)に調査地を変更することを考えているが、収束予想が立たない現状である。 12月に予定しているシンポジウムでは、方言研究と地域振興の関係を中高大の教育関係者や行政・観光の関係者に伝えるためのものとして企画している。本研究が地域のコミュニケーション活動を活性化(良いものとしてとらえ直す)する機会になるよう、特に世代差に注目し、成人には十分にみられる「配慮表現」が中学生や大学生には未発達であることを明らかにする予定である。他にも、大学生の生み出した新しい方言、大学生が祖父母から聞き取るオーラルヒストリーとしての方言、各地の土産物や産物として登場した方言グッズと呼ばれる品の方言などの研究を紹介する予定である。シンポジウム終了後は、国語関係教育者との懇談などを行って、研究成果の教材化へのアドバイスを得る予定である。 3地点目に予定していた日田市での調査も今年度中に進めることができればと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定通り進行したが、11月調査では、当初予定していた調査協力者1名が参加しなかったため、その旅費が生じなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度は調査時に打ち合わせ会議を組み込んで行ったが、時間が足りないと感じた。調査とは別に、研究の中間報告や打ち合わせのための会議を行いたい。その費用として、使用する予定である。
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