研究課題/領域番号 |
15K02584
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研究機関 | 別府大学 |
研究代表者 |
松田 美香 別府大学, 文学部, 教授 (00300492)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 方言 / 談話研究 / 場面別調査 / 地域差 / 世代差 / 性差 / コミュニケーション / アンタ |
研究実績の概要 |
平成28年度は、①大分県竹田市の調査と大学生3地点分の場面別調査、②世代差・地域差の分析と性差の分析、③ホームページ更新、冊子準備、④日本語学会(日本方言研究会)での口頭発表、を予定していた。 実績としては、①大分県竹田市の3世代場面別調査の完了、②談話データの2地点分の分析、③大学公開講座でのシンポジウムの実施、④大分県内での大学連携授業や講座での研究結果の発表を行うことができた。 ①の場面別調査の実施は、大学生の話し手を一度に4名集めることが難しく、2回に分けて行うこととなり、竹田市の成人式前日に出向き、調査協力者4名を集めることとなった。②12月10日に「『方言』が拓く地域力」というシンポジウムを実施し、そこで「中間報告」として分析結果を発表した。また、これまでの大分方言資料と本科研の調査結果についての研究論文を平成29年度に発表するため執筆し、現在校正中である。③ホームページの構築と維持費用を検討した結果、シンポジウムとして談話研究のみならず多彩な方言研究を紹介するほうが、研究周知に効果的との結論に達した。また、シンポジウムの様子と聴衆からの反応を学内雑誌で報告した。④当初予定していた学会・研究会での発表はできなかったが、大分高等教育協議会「とよのまなびコンソーシアムおおいた連携講座『豊の国学』「豊の中央講座」~リレー講演会~」にて、分析結果の中間報告として「大分方言談話から学ぶコミュニケーション力」にて発表した。 大分市と竹田市の調査の結果としては、世代差が顕著であり、高年層と大学生にはコミュニケーション上の言語の工夫が多くみられるが、中学生にはほとんど見られないことがわかった。また、地域差としては、高年層では相手への積極性を示す「アンタ」という差込まれる語が、大分市のほうが多く観察されたということである。性差については、これまでのところ大きな差が見られない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に大分市、平成28年度に竹田市の3世代のペア場面別調査を完了することができた。予定では、平成28年度までにすべての調査を終わらせ、本年度は補充調査をするだけであったが、竹田市の大学生調査を行うことが予想以上に難しかったので、残りの1地点は本年度に行うことになってしまった。また、ホームページでの発表は費用と設定・更新の面から断念したが、年度内に2回の発表の場に恵まれ、大学内での公開講座シンポジウムでは100名以上の参加者に対して本研究を周知することができ、聴衆の反応も良かった。さらに執筆者の1人として、本研究の分析結果を論文化することもできた(平成29年度中に刊行予定)。研究内容においても、目的のひとつであった「中学生の会話時間の短さ」を談話分析した結果、相手の負担を慮ったり、相手に恐縮させまいとする配慮の表現が不足していることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、日田市内での3世代調査を実施し、研究会・学会等で研究結果と考察を発表し、今後の研究の方向性を見極めることを予定している。すでに日田市での調査は6月10-11日に決まり、現在は当地の協力を得て協力者(話し手)の選定中である。昨年度、大学生の選定・決定に思いがけず時間と労力を割かねばならなかった。有識者のアドバイスもあり、日田市内出身に固執せず、県内で隣接する地域であれば許容することにした。(談話においては、市単位で違いが明らかになる可能性は低いとのアドバイスであった。) 国語教育関係の勉強会や学会での発表を予定していたが、大分県には他県にある組織が存在せず、現在でも事務局が特定できていない。その辺の事情を精査し、まずは方言や日本語学の研究会や学会での発表を目指し、その後に国語教育へのアプローチを行うようにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に大分県内2か所で3世代の方言談話調査を予定していたが、実施できたのは1か所のみであったため。調査協力者の旅費などを出費したが、それでも残額が出た。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度にできなかった残りの1地点の調査をする予定である。また、調査地点の文字起こしと方言解説の冊子(報告書)を作成し、協力者や協力団体、研究会・学会関係者に送付する予定である。また、夏~秋の研究会・学会で研究発表をする際の旅費も必要である。
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