研究実績の概要 |
現代英語のN1 of N2という形式の名詞表現において、一部のN1に意味機能上の変化が見られる。すなわち、N1が容器、グループや集合、材料などを表す名詞のとき、N1の本来的な意味が薄れて、N2の分量を表す語法が観察される。本研究では、現代アメリカ英語のコーパスを使って、本来、動物の群を表す語(herd, flock, swarm, school, pride)の用例を調査した。語彙的名詞から分量詞への文法化の進展度を定量的に測定するために、 (1)N1と共起するN2が本来系ではない拡張系のタイプである割合、(2)N2が名詞表現全体の主要部と解釈できる割合という語法の実態を調査し、その結果を統計的に解析した。その結果、(1)については {swarm} > {flock} > {herd, pride, school}、(2)についても{swarm} > {flock, school} > {herd, pride}という、ほぼ同様の順位付けが得られた。swarmが特に高頻度でないにもかかわらず文法化がもっとも進んでいる理由は、swarmに伴う否定的プロソディが際立って高いためだろうと推測される。 ooという綴りを含む語の一部では、[u:]から[u]への短母音化が進行中である。本研究では、Wells(2008)のデータを用いて、短母音化の語彙拡散にかかわる要因を検討した。その結果、当該母音が閉音節、後続子音が無声音、閉鎖音、軟口蓋音であれば短母音化が促進され、各要因が重複すると短音化の傾向がさらに強まる。また、複合語の第2要素の位置にある母音は強勢を受けないため、短音化が有意に促進される。一方、broom, groom, roofなどは特に高頻度でなくても短音化しつつあるのは、高頻度で使用されるroomとの音韻的類似性に基づいて類推が働くためであろうと推測される。
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