1本研究目的は、日英語の文連結現象において指示表現と名詞節化形式が果たす役割を分析し、両言語の普遍性と個別性を原理的に究明することである。本研究では次の3点の解明を目指す。 (i)文連結を支える指示表現と名詞節化形式を伴う諸構文を統語的振る舞いの相違に基づいて分類し、各統語的事実を表面的な形式の背後にある抽象的な統語構造と関連付けて説明する。(ii)各指示表現や名詞節化形式により言語形式化される伝達内容はどのような情報であるのかを機能的、語用論的観点から明らかにする。(iii)文連結における英語と日本語の指示表現と名詞節化形式の選択・出没を比較対照しながら、日英語の知覚認識メカニズムと文法化過程の個別的側面と普遍的側面の実証的解明を試みる。本年度は昨年度に引き続き基礎的資料を収集、観察、分析し、最近の理論的研究成果を踏まえながら、文を連結する際の指示表現の選択と名詞節化形式の生起が語用論的要請にどのように動機付けられているのかを明らかにした。本年度の研究実績として、【論文】大竹芳夫(2018)(「「文をつなぐ」仕組みと「文をつながない」仕組み」『英語語法文法学会』英語語法文法学会編.pp.5-20. 開拓社(東京))を挙げることができる。 本論文では、文連結現象における指示表現itとthatが果たす役割、天候・明暗・時間などを表す文と形式主語構文を1つの主語itで連結する事象、未完結のまま発話を終結する事象、That’s that.とThat’s it.を用いて積極的に発話を終結する事象、へりくだった気持ちを表現して文連結する表現put my two cents inや情報価値のある内容を婉曲に伝えて文連結する表現for what it’s worth、相手の発話を補完して文連結する方策などを取り上げ、文連結現象において指示表現と名詞節化形式が果たす役割を考察した。
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