研究課題/領域番号 |
15K02594
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
堀田 優子 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (90303247)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 認知言語学 / (間)主観性・客観性 / 構文 / 事態解釈 / 他動性 |
研究実績の概要 |
本研究は、認知言語学における「主観性 (subjectivity)・客観性 (objectivity)・間主観性 (inter-subjectivity)」の観点から、英語・日本語の様々な構文に反映される事態解釈(construal)の仕方と表現形式の多様性との関係性を浮き彫りにすることを目指すものである。 H29年度は、事態解釈の仕方に動機づけられる構文形式の「他動性」の問題について、先行研究の整理と検証、及び「他動性」が関わる言語事象における「(間)主観性/客観性」の観点からの分析を試みた。特に、同族目的語構文や結果構文など、英語独特の構文の最新の研究・分析を検証し、その問題点を洗い出し、認知言語学的な観点からのさらなる分析の可能性を探った。また、「他動性」を反映した英語独特の構文表現に関しては、先行研究で示されてきた様々な構文的特徴を、事態解釈の観点から捉え直した分析にも、継続して取り組んだ。さらに、前年度に引き続き、「(間)主観性/客観性」の問題に関する最新の研究動向を探り、客観性・(間)主観性に基づく類型化の研究への知識基盤を固めた。 また、引き続き、対象となる日英語の実例を得るため、大型コーパス(BNCやCOCAなど)や国立国語研究所が提供する日本語コーパス、英訳されている日本語の小説やweb検索等を通して、データを抽出し、英語データに関しては、適宜コンサルタントに確認した。前年度のデータに加えて、さらに、英訳された日本語の短編2作品について、学生の協力を得て、日英語のパラレル・コーパスとして活用できるよう、データベースとして構築中である。そこで得られたデータから、本研究で取り上げる構文等を中心に日英比較を行い、認知文法の観点から分析を試みている。その分析結果については、現在、精査し、さらに発表に向け、まとめている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、「(間)主観性/客観性」「他動性」の問題に関して、研究の最新の動向を常に探りながら、継続して行っている、膨大な先行研究の整理と認知言語学的観点からの検証を予定通り進めることができたといえる。特に、同族目的語構文や結果構文など、「他動性」を反映した英語独特の構文表現に関しては、先行研究で示されてきた様々な構文的特徴を、認知言語学的な観点から捉え直した分析にも、継続して取り組んだ。研究成果の一部は、日本英文学会中部支部第69回大会でのシンポジウムで発表し、他に、2本の論文にまとめ、それぞれ2018年に出版された論集に掲載されている。しかしながら、日本語の構文研究の具体的な分析については、まだ十分とはいえないので、さらなる研究成果が得られるよう、次年度も、精力的に研究を続ける予定である。
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今後の研究の推進方策 |
来年度も、「(間)主観性/客観性」の観点から、日英語の主語に関する研究や、英語のitの非人称構文やその他の英語独特の構文(同族目的語構文や結果構文など)を中心にした研究を継続して行う。さらに、「他動性(transitivity)」の問題にまつわる、日英語の「他動詞文/自動詞文」で示される捉え方の違いや、日本語のヲ格をとる表現とそれに対応する英語表現との違いなどについても、認知文法の観点からの研究をまとめたい。その際に用いる英語や日本語のデータに関しては、大型コーパス(BNCやCOCAなど)や国立国語研究所が提供する日本語コーパスから抽出したデータに加え、原書と翻訳のデータから成るパラレル・コーパスを完成させ、それらから適宜、データを採取する予定である。そして、研究の一部を成果として、研究発表や論文の形で発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に未使用の助成金が発生した理由としては、予定していた海外旅費を使わなかったことや、パラレル・コーパス作成のための作業が半分程度しか進まなかったので、そのための謝金が計画時よりも少なかったことなどが、主な理由である。 次年度は最終年度にあたるため、国内外の学会で発表の機会を得て、数多くの研究会や学会に参加するだけでなく、そうした貴重な機会を通して国内外の研究者と研究交流を図り、最新の研究情報や資料の収集にあたりたい。また、執筆した英語論文の校閲費等にもあてる予定である。
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