研究課題
本研究は、歴史語用論の観点から歴史的データにおける時空間体系を統合的に分析し、その歴史的な発展を分析する初めての試みである。時制や人称代名詞といった時空間の要素に着目し、言語行為等のミクロなレベルにとどまらず、談話等のマクロなレベルに踏み込んだ分析を行い、こういった時空間の要素が相互にどのように関連しているのか、談話においてどのように展開するのか、また、このような時空間の要素の関連が歴史的にどのように変化したのかについて検討してきた。本年度は、昨年度の研究結果を踏まえ、中英語の時空間に関する分析を精密化し、また、初期近代英語の時空間に関する分析を行なった。まず、パストン家書簡集に関する分析をまとめた論文をさらに修正した。また、ラングランドをコーパスとして量的及び質的な分析を行った。次に、シェイクスピア劇をコーパスとして、話者がどのように時空間体系を活用しているのかを観察した。大部分が対話であるため、近称のパースペクティブを取ることが多いのは当然であるが、近称/遠称のパースペクティブの交替がダイナミックで、さらに複雑であることが明らかになった。また、社会言語学的なファクターや対話者同士の関係についても分析を行った。さらに、椎名美智氏と行った共同研究に本研究の成果を生かすことができた。この研究においては、初期近代英語の裁判記録を用いて、法廷内の力関係の変化と時空間体系との関連性を指摘した。本研究により、時空間体系とその歴史的な発展に関する重要な知見を得ることができた。しかしながら、歴史的データにおける時空間体系の分析には、さらに多くの興味深い課題が残されている。今後は、異なるジャンルを比較分析したり、談話における展開を詳細に分析したりすることにより、過去の時空間体系がいかなるものであったのか、その本質をさらに追求していきたい。
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Kwartalnik Neofilologiczny
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Sociocultural Dimensions of Lexis and Text in the History of English (Petre, Cuyckens & D'Hoedt eds.)
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Studia Neophilologica
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10.1080/00393274.2017.1317020