研究実績の概要 |
本研究の目的は、ミニマリストプログラムの中心的役割を果たしている理論の一つであるフェイズに対して、従来の統語範疇に基づく定義ではなく、情報構造に基づく新たな定義を与え、その妥当性を共時的・通時的観点から実証的に証明することである。 研究期間全体において、本研究ではまず情報構造に関わる用語の再確認と整理を行い、続いて、現代英語を対象とした移動現象の分析を行った。具体的には、DP,CP,PPからの移動を中心とした検証を行い、そこで、情報構造に基づくフェイズの新しい定義を提唱した。具体的には旧情報が無標、新情報が有標、という概念を導入し、それらが端素性と結びついて、従来のフェイズの効果の有無を生み出すという提案である。その後、その仮説を精緻化するために、現代日本語を対象とした移動現象の分析、英語を対象とした通時的分析を行った。 最終年度は、現代英語の検証から導き出された情報構造に基づくフェイズの特性・定義が現代日本語にいおいても妥当なものであるかどうかについて移動現象を中心に検証を試みた。具体的には、助詞「は」「が」と情報構造についての考察や、かきまぜ操作を含む日本語研究でしばしば取り上げられる、移動が関わっている操作・構文についての研究を行った。また、本研究で提案した仮説に基づき、通時的観点からその妥当性についても検証を試みた。具体的には、冠詞、不定冠詞を含むDPからの抜き出しについての古英語、中英語期のデータを抽出しながら検証を行った。これについては、コーパス等のデータの検証に予想以上に時間を要しているため、継続研究となる。
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