最終年度にあたる2017年度は、研究分担者である谷口・深田が2015-2016年に担当してきた調査の成果を統合し、認知言語学の理論的観点から、英語の構文獲得のメカニズムに関する包括的な分析・考察を行った。 谷口は、英語のget+過去分詞、get+形容詞を中心とした状態変化の構文、深田は移動動詞go/comeや let's +移動動詞の構文の使用状況を、こどもと大人の会話データベースであるCHILDESにより調査し、こどもの発話の特徴を発達段階に即して観察するとともに、大人からこどもに向けての発話 (Child Directed Speech) の特徴にも着目し、データを量的・質的方法で分析した。その結果、言語獲得初期において get+過去分詞・get+形容詞が身体的な「被害性」という意味要因と顕著に結合していること、英語の let's +移動動詞の構文には対話者の移動だけではなく行為を誘発するといった間主観的な用法が特徴的に見られることが示された。構文獲得の過程が運動能力の発達に連動し、身体的経験や対話者とのインタラクションといった使用場面と密接に関連することが確認されたほか、言語獲得のプロセスが大人の文法知識の心的表示にも一定の影響を与える可能性が示唆された。 なお2017年9月、日本認知言語学会第18回大会において、言語獲得のワークショップを主催・企画し、本研究課題の成果を発表するとともに、作業療法・人口知能の専門家の知見をまじえ議論し、言語獲得における身体性およびインタラクションの重要性を再確認した。
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