研究課題/領域番号 |
15K02601
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
松本 マスミ 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (10209653)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 中間構文 / 同族目的語構文 / 無生物主語 / VoiceP / ASPP / アスペクト / 動作主 |
研究実績の概要 |
平成27年度は英語中間構文と英語同族目的語構文を中心に研究を進めた。 中間構文については、Alexiadou et al. (2015)による受動文と中間構文についてのタイポロジー的研究におけるVoicePの上にAspPがある構造を本研究の参考とすることができた。また、平成27年度は心理動詞についても研究する予定であったが、心理動詞と関わりの深い無生物主語との関連から、「植物、ヒト、ことば」という論文を執筆した。生物学的に見た「植物」の特性についての基本文献を参考にし、ヒトと植物を扱った文学作品からのデータを検討した結果、植物が生物であるにもかかわらず無生物のように扱われるのはなぜかという問題について、ヒトと植物の生物学的・言語学的特徴付けとして、植物は意志、感情がなく、移動、発話も行わない特徴から、無生物のように扱われるという結論に至った。この結論は、心理動詞の主語を動作主と解釈するかそれとも原因と解釈するかという研究につながると期待できる。 同族目的語構文については、改めて包括的なデータの収集を行った。特にHorrocks and Stavrou (2010)による他の言語と比較した英語の同族目的語構文の研究から、アスペクト関連のデータを多く収集することができた。また、アメリカ言語学会に参加して、Voiceと機能範疇pについてのKastenerの研究から、VoicePについての新しい知見を得た。これらの成果をまとめて、現在、「データから見た同族目的語構文の特徴」を執筆中である。 以上のように、VoiceP、無生物主語、同族目的語構文のアスペクトについて、今後の研究の発展につながる成果をあげることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は中間構文と同族目的語構文の地固めを行う予定であったが、研究はおおむね順調に進展している。 まず、中間構文の方では、心理動詞の最新の動向を把握するということであったが、心理動詞の解釈と関係のある無生物主語について、生物言語学的な視点も導入して論考をまとめることができた。 同族目的語構文については、これまで筆者が有しているデータベースにHorrocks and Stavrou (2010)などの研究を加えて全般的なデータの見直しを行い、「データから見た同族目的語構文の特徴」を執筆中である。さらに、アメリカ言語学会大会に参加して、VoicePと機能範疇pPという、新たな構造についての知見を得ることができた。 日程の調整の都合で、Alexiadou教授の来日は次年度に延期されたが、Alexiadou教授の最新著作であるExternal Arguments in Transitivity Alternation (2015)から、VoicePのタイポロジー的な構造とVoiceとASPについて最新の知見を得ることができた。 以上から、本研究はおおむね順調に進呈していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、研究協力者Alexiadou教授とできればもう一人研究者を海外から招き、本研究に助言を受ける他、VoiceP, ASPPなどのテーマで国際研究集会を開催し、中間構文におけるASPPの存在の妥当性について最新の知見を得る。また、現在執筆中の「データから見た同族目的語構文の特徴」を完成し、紀要などに投稿して出版する。さらにその論文のデータに基づき、同族目的語構文における同族目的語と指示性、英語の関連構文の出来事構造とASPPについて、考察を行い、英語の両構文における統一的ASPPモデルを提案する。最終的な結論を得ることができなくても、平成29年度までには提案ができるようにする。また、植物とヒトの比較による無生物主語の解釈の研究をさらに推し進めるとともに、その研究の英語教育への活用について、日本英文学会北海道支部で招待講演を行うことになっている。 平成29年度は日本語において中間構文と同族目的語構文に相当する表現を中心に研究を行う。平成30年度は成果をまとめ、論文執筆や研究発表の準備をするとともに、通言語的な見地や他の構文との関係からASPPPモデルを調整する。 平成31年度は、これまでの研究成果を発表する。 研究期間を通じて、国内外の学会・研究会に積極的に参加し、最新の知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は、当初、研究協力者であるAlexiadou教授が来日予定で、旅費・謝金の他国際研究集会用予算として約40万円を準備していたが、日程が調整できず来日が次年度に延期となり、松本の方も訪独ができなかった。そのかわりにAlexiadou教授の最新の著作から知見を得た。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度にAlexiadou教授をあらためて招聘する。また、日程が調整できれば、もう一人研究者を海外から招聘して、より内容の濃い国際研究集会とする。
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