研究課題/領域番号 |
15K02601
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
松本 マスミ 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (10209653)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 同族目的語構文 / 中間構文 / アスペクト / 持続性 / 動的 / 完結性 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、翌年である最終年度にむけて、これまでの研究の成果をまとめる作業を開始し、次の研究を行った。 (1)本研究のテーマである英語中間構文と同族目的語構文(以下、CO構文)を比較する論文が『大阪教育大学英文学会誌』に掲載された。本科研研究で執筆した「データから見た英語同族目的語構文」(2017)などのデータを利用して、中間構文とCO構文の3つのアスペクト的特性を比較し、共通点と相違点を指摘した。3つのアスペクト的特性とは、動的/状態的、完結的/非完結的、持続性である。2つの構文の共通点は、種類が違うものの、両者とも持続的な解釈が可能であるという点である。一方、両者は状態性や完結性においては対照的である。中間構文とCO構文では、他動性において逆方向の変化が起こっているが、この変化によってもたらされたアスペクト的性質の特性を、Travis (2010)のASPPや松本(2007)などで提案された三層分裂動詞句を発展させて説明する方向性を示した。 (2)平成30年度も学会研究会に積極的に参加し、新しい知見を得た。本研究は中間構文については移動分析の立場をとっているが、日本英語学会に参加することにより、多重格付値システムを用いた意中間構文移動分析という新しい知見を得ることができ、本研究におけるASPP分析の参考とすることができた。また、東京共創言語進化学講座に参加することにより、現在のsyntaxをdecomposeして中間態を含むproto-grammarから動詞句がどのように進化したかという通時的知見を得ることができた。 (3)他の研究費で招聘したアリゾナ大学Fong博士と、CO構文におけるCOが項か付加詞かという問題についてあらためて議論し、CO構文の統語的分析の参考とすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は予定通り中間構文と同族目的語構文(CO構文)のアスペクトを比較した論文を執筆し『大阪教育大学英文学会誌』に掲載された。また、国内外の研究者と本研究のテーマについて議論し、特に、最終年度の研究に必要な統語構造による分析に対する最新の知見を収集することができた。したがって、最終年度に向けて、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は最終年度であるので、これまでの研究を発表し社会に還元する。11月末に日本英文学会北海道支部の招聘講演が確定しており、本研究の成果をわかりやすく発表する。また、本研究の成果をまとめた論文を令和2年2月出版予定の『大阪教育大学英文学会誌』で発表する予定である。 今年度前半は、論文執筆と研究発表の準備をする。両構文を含むASPPや動詞句について、pair mergeやset mergeを用いた分析を検討する。7月にはクレタ島における項構造についてのHarleyの講義に参加し、執筆中の論文内容を修正する予定である。 また、日程調整ができれば、海外から研究者を招いてワークショップを行う予定である。さらに、来年度からは本研究を含む項構造や自他交替の研究を高校における英語力向上に応用する研究を行う予定で、今年度はそのための準備も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成31年度は研究発表またはワークショップを予定していたが、その予定に加えて、項構造の最新の知見を得るために海外出張をしなければならなくなった。そのため、平成30年度に書籍購入に使用する予定であった予算の一部を次年度に繰り越した。書籍については大学の運営費交付金による個人研究費と私費で補った。
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