研究実績の概要 |
研究計画1年目にあったる平成27年度は,英語二重目的語構文 (double object construction, 以下DOC) にて受益者 (Recipient, 以下REC) が受動態の主語となる構文 (以下REC受動) の確立過程をコーパスデータと共に考察した。 より具体的には,(i) REC受動の発達には文法化 (grammaticalization) が関係していること (ii) 文法化の観点を入れると「間接目的語の直接目的語への再分析」をより適切に捉えられること (iii) REC受動の広がりに見られる偏りは文法化進捗度の偏りであり,この現象には構文文法を援用した説明が有望であることをみた。 論拠として,近代英語コーパスであるCLMET (the Corpus of Late Modern English Texts) にてgive, tell, bring, payの各動詞(これらは1650年以降の英語与格交替構文で高頻度の動詞であったことが分かっている)と,それらと意味的に近く,なおかつDOCに現れうる動詞の過去分詞形を検索してヒット例全てに目を通し,DOCの受動態例を採取・考察した。 この通時的コーパス調査の結果,概ね「tell系 > pay系 > give系 > bring/send系 > 獲得・作成動詞系」の順にREC受動が広がっていることが分かった。さらにREC受動の広がりを体系的に説明すべく,与格RECの文法化,動詞の意味と構文の意味のインタラクション,そして構文ネットワークを通した拡張の存在を提案した。
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