• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

譲歩からの意味拡張に関する記述的、理論的研究

研究課題

研究課題/領域番号 15K02605
研究機関九州大学

研究代表者

大橋 浩  九州大学, 基幹教育院, 教授 (40169040)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード文法化 / 譲歩 / トピックシフト / 構文 / 構文化 / 構文変化 / 使用依拠 / 談話標識
研究実績の概要

昨年に引き続き主に日英語の意味変化、構文化、文法化、談話、語用論、歴史言語学関係の図書を購入し、譲歩および意味変化に関する研究について情報を収集し考察を行った。事例研究としてはhaving said thatの研究を継続した。懸案であったCOHAでの再調査を行い、正確なデータを採集し、それに基づき、having said thatのトピックシフトの用例をより多く収集することができた。分析結果を、日本フランス語学会シンポジウム「自然言語の歴史的変化と文法化」、成蹊大学シンポジウム「認知言語学の内と外から言語変化を捉え直す」、日本英文学会シンポジウム「構文とコーパス」、明治大学国際シンポジウム「New Directions in Pragmatic Research: Synchronic and Diachronic Perspectives」で発表し、フィードバックを得た。特に今年度はフランス語、韓国語、日本語における文法化や構文化の第一人者や計算機による言語進化の優れた研究者との議論を通して研究の方向性の正しさを確認し、関連する知見や今後の研究に関する示唆が得られたことが大きな進歩であった。
Having said thatにおけるトピックシフト機能の発達に加えて、日本語の「ところで」の発達についての調査を開始した。トピックシフトの「ところで」は譲歩(逆接)の用法からではなく順接用法からの発達であるらしいことがわかった。今後はトピックシフトを含めた談話的機能の発達へ研究を拡げる可能性を考える契機となった。
Traugott and Trausdale (2013)の書評を通して構文化としての文法化に関する理解を深め、having said thatの文法化を構文化として見る分析を進行中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度来の課題であったhaving said thatのCOCAにおける用例の検索漏れへの対応として、改めて検索し直して正しいデータを得ることができ、そのデータに基づいて、having said thatの構文的特徴とその使用実態についての大橋(2013)などにおける分析の正しさを検証することができた。それに加えて、より多くのトピックシフトとしての用例が収集でき、この用法が当初考えていたよりも定着していることが明らかになった。
日本語における譲歩からトピックシフトへの可能性がある例として新たに「ところで」についての調査を始めた。結果的には譲歩ではないらしいことがわかったが、今後の研究の方向性として、トピックシフトの発達が考えられる機会となった。また、明治大学国際シンポジウムにおける東泉裕子氏との議論により、日本語の「にしても」や「だけど」もまた譲歩からトピックシフトへの拡張の事例としてかんがえることができることがわかった。
Traugott and Trousdale(2013)などが主張するUsage-based Construction Grammarの枠組みが、文法化の詳細な記述や分析に有効であることがわかり、それをhaving said thatや「ところで」の分析に援用することを試み、実際の適用を模索する内に、この枠組みの問題点もいくつかわかってきた。
4つのシンポジウムでの講演、口頭発表で、having said thatの意味拡張や譲歩構文の談話的基盤についての自分の考えが興味深く受け入れられたことに加え、異なる言語、異なるアプローチの専門家たちとの議論によって今後の研究への方向性に示唆が得られた。

今後の研究の推進方策

最終年度なので研究をまとめる。まずhaving said thatにおけるトピックシフトの用法が、譲歩からの発達であることを、通時的なデータによって検証する。COHAだけでは用例が少ないので、入手可能な通時的、歴史的コーパスの調査を行う。その成果を7月北アイルランドで開催される国際語用論学会におけるワークショップで発表し、フィードバックを得た上で、論文を執筆する。
また、明治大学の国際シンポジウム時にSeongha Rhee教授(Hankuk University of Foreign Studies)より得たフィードバックに基づき、関連構文としてのthat saidやthat being saidに同様の発達が見られるかどうかを調査し、その結果について考察を行う。
並行して、日本語の「ところで」の調査を継続する。先行研究を調査し、その発達の過程を特定する。また、「にしても」や「だけど」についての研究を調査し、譲歩からトピックシフトへの拡張事例であることを検証したい。
研究のまとめとして、譲歩の構文的特徴とそこからの意味発達について調査内容をまとめ、新たに発達した意味と譲歩構文の特徴との関連について考察する。また、今後の研究トピックとしてトピックシフトという談話機能の発達と元来の構文の特徴について考察する。

次年度使用額が生じた理由

当初予定していたとおりその時点までの研究成果を第6回イギリス認知言語学会(UK-CLC 2016)で発表すべく応募し、採択されていたが勤務校の校務により発表をキャンセルしたため計上していた海外旅費280,000円が繰り越しとなった。また、英語の論文を執筆しなかったため、専門知識の提供・英語論文校閲代として計上した150,000が繰り越しとなった。

次年度使用額の使用計画

今年7月北アイルランドにて開催される国際語用論学会(15th International Pragmatics Conference, Belfast 16-21 July 2017)の、ワークショップ(Sequentiality and Constructionalization of Discourse-Pragmatic Markers)での口頭発表がすでに採択されているため、その旅費として使用する。また、発表内容をもとに論文を執筆する際に、専門知識の提供・英語論文校閲を依頼するのでその費用として使用する予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)

  • [雑誌論文] Review: Constructionalization and Constructional Changes2017

    • 著者名/発表者名
      Hiroshi Ohashi
    • 雑誌名

      English Linguistics

      巻: 33:2 ページ: 604-615

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 「シンポジウム」 コーパスからの認知言語学へのアプローチ2016

    • 著者名/発表者名
      長 加奈子・大谷 直輝・大橋 浩・川瀬 義清
    • 雑誌名

      英語コーパス研究

      巻: 第23号 ページ: 61-78

    • 査読あり
  • [学会発表] Concessive Constructions and the Development of Discourse Management Function: The Case of having said that2017

    • 著者名/発表者名
      Hiroshi Ohashi
    • 学会等名
      The Meiji International Symposium 2017 New Directions in Pragmatic Research: Synchronic and Diachronic Perspectives
    • 発表場所
      明治大学中野キャンパス
    • 年月日
      2017-03-20
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 譲歩構文と拡張2016

    • 著者名/発表者名
      大橋 浩
    • 学会等名
      日本英文学会九州支部 シンポジウム「構文研究とコーパス」
    • 発表場所
      中村学園大学
    • 年月日
      2016-10-22
  • [学会発表] 譲歩からの変化2016

    • 著者名/発表者名
      大橋 浩
    • 学会等名
      成蹊大学アジア太平洋研究センター共同研究プロジェクト「認知言語学の新領域開拓研究」シンポジウム認知言語学の内と外から言語変化を捉え直す
    • 発表場所
      成蹊大学
    • 年月日
      2016-08-12
    • 招待講演
  • [学会発表] 認知的アプローチと文法化:英語の強意副詞を例に2016

    • 著者名/発表者名
      大橋 浩
    • 学会等名
      日本フランス語学会2016年度シンポジウム 自然言語の歴史的変化と文法化―日英仏語の事例研究と数理的アプローチの批判的検討を通じてー
    • 発表場所
      学習院大学
    • 年月日
      2016-05-28
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi