研究課題/領域番号 |
15K02607
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
稲田 俊明 長崎大学, 言語教育研究センター, 教授 (80108258)
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研究分担者 |
稲田 俊一郎 明治薬科大学, 薬学部, 講師 (10725386)
今西 典子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (70111739)
西岡 宣明 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (80198431)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 修辞疑問 / WH-構文 / インターフェイス制約 |
研究実績の概要 |
日英語の修辞疑問文と関連構文について調査し、統語構造と談話・意味のインターフェイスについて、下記の点を明らかにした。(A-1) 文タイプや発話行為に関係する文末表現が顕在化する日本語のような言語タイプとそうでない英語タイプの言語では、言語運用上の要請を文法化する仕組みに違いがある。(A-2) 修辞疑問の特殊な制約に見える統語条件に対する説明は、先行研究の分析案とは異なり、日本語の発話動詞の埋込み形式と等質の統語構造と談話・意味のインターフェイス制約から説明すべきである(また、実際に、そのような具体的な説明が提示できる)。(A-3) その他の日英語の修辞疑問の共通点と相違点は、言語の普遍的特性と 上記の言語タイプによる文法化の仕組みの帰結として説明すべきである。
具体的な提案として、日英語の多重 WH-RQ の相違はどこから来るのか、日英語のRQはなぜ感嘆文と類似した特性を持つのかについて、次の試案を示した:(B-1)英語の多重 WH-RQが許されないのは、in-situ WHを認可する仕組みがないためである。日本語の多重 WH-RQが可能なのは、WH-句の特性と (1a) の相互作用である。(B-2) RQにおけるWH-量化詞の変域は、感嘆文と並行的であること。RQのWH-句の値は、感嘆文と同様にゼロではない (驚くべき値/了解している値を取る)。
更に、稲田・今西 (2016) の主張の妥当性について、日英語のWH-形式の特性、談話指標と関連する発話動詞による埋込み構造の日英語間の相違等に基づいて具体例を検討しながら検討した。特に、修辞疑問における多重WH句制約、修辞解釈と感嘆文との類似性、Pied-Pipingの制約などについて、従来のアプローチの問題点を指摘し、新しい分析案を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標は、修辞疑問、問返し疑問、感嘆文に関わる問題について、個別言語のWH構文の特性の研究に加えて、統語・音韻・意味・談話のインターフェイスを探る理論研究の探査領域として研究することであった、日英語の修辞疑問について、具体例に基づいて調査し、先行研究の分析とアプローチの問題点を指摘し、新しい分析案を提示した点で、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、「発音されない言語表現に潜む統語特性、意味特性、談話特性の探索」は、文法体系と言語の外側の認知体系との関わりという観点から、言語機能における所謂 “the third factor” の解明を目指すことであった。その点で、おおむね順調に進展しているが、通言語的調査が今後の課題である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者と分担者の研究打ち合わせなどを、学会等の機会を活用して行ったので、出張旅費など、頭書の予算が残った。
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次年度使用額の使用計画 |
計画通りに、研究打ち合わせ、成果発表、報告書印刷等を行う予定である。
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