研究課題/領域番号 |
15K02608
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
廣江 顕 長崎大学, 言語教育研究センター, 教授 (20369119)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | represented speech / adjunct / speech act verb / bare-embedding / direct quote |
研究実績の概要 |
描出話法(Represented Speech:RS)文の基本的文法特性を、その統語分布、とりわけ主節動詞(あるいは述部)に選択された補部(complement)かあるいは付加部(adjunct)か、文法範疇は何か、格素性は有するのか否か、といった点を中心にインフォーマント調査を行った結果、RS文は主節動詞によって選択されたものではない付加部であり、格素性を有しないことを明らかにした。また、典型的には発話行為動詞の補文の位置に埋め込まれているRS文の埋め込み方法は、けっして特異な埋め込み形式ではなく、直接引用文の埋め込み形式と同じ文法形式であることを主張した。さらに、Jackendoff(1990, 1997)における三部門並列モデル(Tripartite Parallel Structure)を仮定すれば、一見、補部の位置に生じているように見えるRS文は、統語構造(syntactic structure)では付加部として、概念構造(conceptual structure)では補部として機能していることを捉えられることを主張した。 一方で、描出話法文の文法特性に関するこれまでの先行研究にあたり、そこで提出された事実やそれに基づく提案等の再検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度であった平成27年度内で、描出話法文の文法特性に関する基本的特徴づけを行い、RS文は主節動詞に選択されたものではない付加部だという、先行研究とは異なる新しい事実を発見した。さらに、RS文が文学作品等に特徴的な技法だとのこれまでの主張が、その埋め込み形式に関する限り、(部分的に)誤りであることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、RS文を特徴づける他の特性、代名詞を含む指標語句の解釈等が小説技法上の作法なのか、またLFインターフェィスで特別なことが起こっているのか、つまり、言語内の現象なのか言語外の現象なのかを明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外からの書籍が入荷するのが遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
関連書籍の購入に充てる。
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