本研究は現代英語における動詞の名詞化の性質を、形態・統語のインターフェイスの観点から、他言語との比較・史的変遷をも考慮して調査し、理論・実証の両面から多角的に解明した。具体的な研究目的は、①名詞化における接尾辞の役割を、ゲルマン系接尾辞・ロマンス系接尾辞の区別に着目して検証し、②派生名詞が現れる統語構造について、名詞化が統語部門と形態部門のどちらで行われるかを中心として分析し、③ゲルマン・ロマンス諸語との比較及び英語の史的変化の過程における現代英語の名詞化の位置づけを明らかにすることであった。 ゲルマン系接尾辞・ロマンス系接尾辞の区別が英語の名詞化において果たす役割に注目して、名詞化が統語部門と形態部門のどちらで行われ、最終的にいかなる統語構造を形成するのかを明らかにした。ゲルマン・ロマンス諸語及び過去の時代の英語に適用し、現代英語について得られた成果の妥当性を検証し、補強した。 動詞の名詞化のプロセスを通じ、形態・統語のインターフェイスを解明したことは、大きな意義がある。本研究は生成文法理論の初期から蓄積されてきた研究成果を生かしつつ、名詞化の領域における従来の統語・形態論研究を見直し、他言語との比較や史的変化の観点をも取り入れた、形態・統語のインターフェイスに関わる多角的な研究として、特色のある研究であると考えられる。 本研究における成果を基として、今後は英語の動詞由来複合名詞を研究対象として、形態・統語のインターフェイスの解明に引き続き取り組む予定である。
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