日本人にとって習得が難しい冠詞は、英語において遅く14世紀に出現したが、これは、「文法化」と言われる大きな言語変化の1つである。本研究はある語彙が意味を漂白化させ、文法機能中心の語に変化するという従来の文法化以外の文法化、すなわち構造変化としての文法化という視点を明確化することができた。そして、不定冠詞がなぜ遅く出現したのかは、二次的文法化という視点から分析できることを提案した。一般的に「文法化」は二段階で進行するという仮説である。一次文法化は定冠詞を生み出し、その結果出現した「場」が不定冠詞を生み出すことになった。また、出現した冠詞は古英語においては存在しない二重目的語構文を可能にした。
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