平成30年度においては、話し手が聞き手に対する「約束表現」における調査を行った。 研究方法としては、中英語期から後期近代英語期までの文献における「約束表現」を調査した。特に、発語内行為として「約束」の機能を果たしていると思われる動詞と1人称人称代名詞が結びついている表現を丁寧に拾い上げた。このアプローチは、歴史語用論における「通時的な機能ー形式の対応づけ」(Diachronic Function-to-Form Mapping)の手法である。 中英語期においては、あまり「約束」の機能を果たしている表現が少なく、"I plight you(thee)"のような表現がみられた。ポライトネスの観点からは、ポジティブ・ストラテジーにもネガティブ・ストラジーにも分類できないような例が多くみられた。 初期近代英語期になると、"I promise you"の表現が次第に増加するという傾向がみられた。そのほかにも "I swear"や "I warrant you"のような様々な動詞がみられるようになった。 後期近代英語期には、小説というジャンルも現れるため、さらに「約束」表現が増えていく様子が見られた。 このような「約束」という機能を表す表現を使用する話し手と聞き手との社会的関係を親子、夫婦、恋人、兄弟、友人というような観点からみると、それぞれの場面において、相手との心的距離を離したり縮めたりするために「約束」表現もポライトネスの一環として用いられていることが明らかになった。
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