研究課題/領域番号 |
15K02623
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
小倉 美恵子 鶴見大学, 名誉教授, 名誉教授 (60074291)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 複雑適応体系 / 言語進化 / 脳 / 同音異義語 / 名詞 / 動詞 |
研究実績の概要 |
これまで語彙拡散による英語史上の音韻、形態、統語、意味、語彙変化の研究を、複雑適応体系内在する基本原理(淘汰、自己組織化、相転移、曖昧性と頑強性、ネットワーク)の観点から統合した。本年度は、これを更に進めて言語進化と脳の相互関係の観点から、同音異義語の発達とその脳の中での基盤をデータと光トポグラフィーを用いた実験で明らかにした。 CELEX database, Brooklyn-Geneva-Amsterdsm-Helsinki corpus of Old English, Penn-Helsinki corpusに基づき、同音異義語は古英語、中英語、現代語と時代と共に累積することを示し、話者と聴者の制約の結果同音異義語が起こるとするZipf’s Lawの中に要因を探った。同時に形態と意味を1対1にするため同音異義語を避ける方策も働く。初期近代英語以降にフランス語、ラテン語の借入、語尾の消失により大量に出来た名詞と動詞の同音異義語が出現し、それに対して聴者による理解し易さのために名詞と動詞のアクセントによる区別が生じた。その過程についてOED及びWebster3に基づき、様々な変異形の競合過程を呈す複雑的適応体系を明らかにした。 更に二音節の名詞と動詞による同音異義語と、アクセントによる名詞と動詞の区別について光トポグラフィーによる実験を行い、脳の中での基盤構造を明らかにした。音の知覚については、話者の音響的特徴に従うのではなく、聴者の意図を反映するような知覚が脳の中で行われていることを明らかにした。 また名詞と動詞の同音異義語のアクセントによる区別は、最初頻度の高い語対から始まるが、このときは脳では文法範疇として知覚されている。その後頻度の低い語対から変化が起こっているが、この時は意味に基づいて知覚が行われていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
同音異義語の史的累積と、近代以降のアクセントによる名詞と動詞からなる同音異義語の区別について、データと光トポグラフィーによる実験両面から明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で得られた成果をEvolution of Language, International Conference on English Historical Linguistics の国際会議で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の成果を発表する2年毎に開催されるEvolution of Languageの国際学会は、通常3月に行われるが、今回は4月15-19日に行われるため補助期間の延長をした。この学会で論文"Evolution of Homophones and Grammatical Categories Noun and Verb"を発表するための旅費として使用する。
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