クリティカルシンキング(批判的思考力)の育成の重要性は広く注目されるようになったが、外国語教育(英語教育)等の単一文化クラス環境の中で行われていることが多い。本研究では、多様な価値観との接触が既存の自己の価値観を問い直す原動力となる点に着目し、大学の留学生と日本の学生が共に学ぶ多文化クラスにおけるクリティカルシンキングの育成を目指したシラバスの開発に取り組んできた。多文化クラスにおけるクリティカルシンキングの授業による実践研究により得られた示唆により、1)多文化環境とクリティカルシンキング育成の関連性について実証に基づいた学問的な体系整理をするとともに、2)同内容の授業実践を日本語使用と英語使用の場合に分けて行い、使用言語に関する問題についても明らかにする研究計画を立てた。英語による授業と日本語による授業の比較により、特に日本人学生の特徴的な役割の傾向が明らかになった。日本人学生は日本語による多文化クラスにおいても留学生に比べて積極性に劣る傾向があることから、英語による多文化クラスにおいて、コミュニケーションが少ないのは必ずしも言語運用力の不足だけに起因するものではないと考えられる。また、日本語のクラスにおいて留学生の立場を日本人学生は母語話者として丁寧に配慮する傾向があり、日本語によるクラスの潤滑な活動の進行に貢献していると考えられた。 最終年度である今年度はは論文執筆や学会発表による成果発表に専念した。 上記の1つ目のテーマについては現在、複数の論文を執筆中で、2つ目のテーマである使用言語の問題について査読つき論文1本(日本語)と国際学会での研究発表2本(英語)を行った。2番目の使用言語に関する問題は、当科研費研究内では解明しきれなかった点があり、2018年度より始めた多文化クラスの英語使用に焦点を当てた新たな科研費研究のほうで継続していく予定である。
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