研究課題/領域番号 |
15K02629
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
渡辺 文生 山形大学, 人文学部, 教授 (00212324)
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研究分担者 |
澤 恩嬉 東北文教大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (50389699)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 談話分析 / 講義の談話 / トピック・センテンス / 話段 / メタ言語表現 / 留学生 / 聴解 |
研究実績の概要 |
本研究は,大学で学ぶ留学生が日本語の講義を理解するのに手がかりとなる表現を,講義の談話の分析を通して抽出し,聴解テストによる理解実験をとおし講義の聴解力を伸ばす指導法を探ることを目的としている。具体的には,1)NHKカルチャーラジオのテキストと講義をデータとした,講義談話の構造分析を行う,2)構造分析の結果をもとに聴解テストを作成し,留学生を対象に理解実験を行う,3)聴解が困難な文型や文構造を解明することにより,講義の聴解力を伸ばす指導法を探ることの3点である。 平成27年度においては,書き起こされたラジオ講義について,トピック・センテンスや主題文で使われる表現や文型などの知見をもとに,話段を単位とした構造分析および談話において使用されている文型の分析を行った。そして,その結果をもとに作成した聴解テストを用いて,留学生を対象とした理解実験を行った結果,トピック・センテンスとそれをサポートする文脈との位置関係の影響について,トピック・センテンスがあとに現れる方が理解しやすいという傾向が見られた。 平成28年度においては,トピック・センテンス内のメタ言語表現の位置が受講者の理解にどう影響を与えるか,そして,その影響に関する日本語母語話者と学習者との相違について分析を行った。その結果,メタ言語表現がトピック・センテンスの叙述内容に先行した方が理解しやすいのではないかという予測を支持する結果は得られなかったが,メタ言語表現に注意を払ったノートの取り方が,日本語母語話者・学習者ともに後の理解表象に影響を与えるということがわかった。その分析結果は学会で口頭発表し,プロシーディングとして公開されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では,平成27年度にラジオ講義のデータ収集と談話の構造分析と聴解テストの作成を行う予定であったが,これら2つの作業を並行して行い,平成27年度中に平成28年度に予定していた理解実験を前倒しして行った。そのため,データの分析作業に早く取り掛かることができ,平成27年度,28年度と継続して分析結果を発表することができた。 講義の談話の聴解においては,メタ言語表現が理解の手がかりになるとの見通しで研究を進めている。これまでの分析結果では,トピック・センテンス内におけるメタ言語表現の位置的効果については,関わる要因が複雑で,単純にトピック・センテンスの語順だけが結果に反映するのではないということがわかった。一方,日本語母語話者・学習者ともに,メタ言語表現に注意を払ったノートの取り方が,後の理解表象に影響を与えるということもわかってきた。データの分析が早めに進んでいることから,その分析結果の知見を生かした理解実験として,平成28年度後半にノートも分析対象とした聴解テストによるデータ収集を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,1)聴解テストによる理解実験の継続,2)理解実験の結果の分析,3)講義の談話の聴解に関わる指導方法の検討,4)研究成果についての学会・論文等での発表を行っていく。平成28年度後半から始めた新たな聴解テストによるデータ収集を継続し,分析のためのデータを蓄積する。そして,それらの分析結果をもとに,学部留学生の講義の聴解力を伸ばすための指導法について検討していく。成果については,学会での口頭発表や論文の形で公開していく予定である。 平成29年度も,理解実験に協力してもらえる学部留学生が昨年度と同程度に得られる見込みであり,これまでの分析結果をフィードバックさせた効果を測る調査を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ分析作業を研究代表者と分担者で賄ったため,人件費等を使用せずに済み,次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に行う研究成果発表のための旅費等に当てる予定である。
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