本研究の最終目標は学習者同士でのグループ練習の活動を通して、効果的に漢字学習ができる教材を開発することである。平成21年度より、中・上級レベルの漢字クラスにおいて学習者同士でのグループ練習を教室活動に取り入れ、グループ練習を効果的に行うための教材開発を継続的に行っている。グループ練習では 漢字・漢字語の字形、読み、意味、用法、語構成にかかわる練習を扱っているが、本研究では学習者同士でのやり取りの様子や学習者一人一人の習得状況を観察することによって、特に漢字・漢字語の読みに注目し、グループ練習の中で習得可能な学習項目と、学習者だけでは習得が困難な学習項目を分別する。あわせて、グループ練習教材にはタブレット端末、ワークシート、カード教材を使用しているが、練習内容に応じて各ツールをどのように組み合わせるのが適切かを検討する。そして、これらの結果をもとに、より効果的なグループ練習を行えるような教材の開発を目指す。 平成29年度までは資料収集を行いながら、グループ練習における学習者同士のやり取りを記録した音声資料の整理・分析、さらに、教材で扱う漢字語と中国語・韓国語との対応関係を調べたリストを作成した。 最終年度である平成30年度は、まず、学習者のグループ練習に対する評価を測るために実施したアンケート調査の資料分析を行った。次に、漢字クラスで実施した漢字語の読みテストにおける解答状況をもとに、漢字語を読みの難易度別に整理したリスト(282語)を作成した。そして、これまでの研究結果をもとに教材の改訂を行い、中級レベル12教材、上級レベル11教材、計23のグループ練習教材を開発した。開発教材はWeb上で公開し、利用者が各自のニーズにあわせてアレンジしやすいように書き込み可能な形式で提供するとともに、教材のダウンロードサイトはスマートフォン対応とし、利用者がアクセスしやすいよう配慮した。
|