研究実績の概要 |
日本社会における労働力人口の減少とビジネス環境のグローバル化の進展により, 元外国人留学生を高度外国人材として採用する企業が増えている。日本企業等に就職した元留学生数は,過去最高となった。日本企業が高度外国人材を採用する際に最も重視する能力の一つはビジネス日本語能力であるが,教育とビジネスの現場で共有可能な評価基準や枠組みは定まっていない。高度外国人材の育成・教育・評価に資する枠組みとなる「ビジネス日本語フレームワーク」の構築は喫緊の課題である。本研究は,フレームワーク構築のための直観的手法を用い,ビジネス日本語フレームワークのレベル設定,技能分類,Can-do全体の構造,能力記述文作成の原則を決定した。レベル設定は,CEFRに準じてA1~C2までの6レベルとし, 技能分類は「聞く」「読む」「書く」「話す」「やりとり」とした。また,Can-doの「条件」「場面」「対象」「行動」について基準を設定した。高度外国人材に求められるビジネス日本語に関するCan-do項目をリストアップするために既に存在する尺度(CEFR,JF日本語教育スタンダード,TOEIC Can-Do Guide等)からCan-do項目を抽出した。ビジネスコミュニケーションタスク以外の項目は,ビジネス場面に合わせて書き換えを行なった結果,能力記述文バンクに約800項目が登録された。CEFRは2018年にmediation(仲介)スキルについて新たな定義とCan-doを発表し, グローバルなビジネス場面での「仲介」の重要性が示された。そこで,高度外国人材に求められる「仲介」スキルを明らかにし,ビジネス日本語フレームワークに集約するため,国内外で活躍している高度外国人材にインタビュー調査を実施した結果,言語能力や異文化コミュニケーション能力を活かし,日本企業と取引先の仲介役となって活躍していることが明らかとなった。
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