研究課題/領域番号 |
15K02651
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研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
栗原 通世 国士舘大学, 21世紀アジア学部, 准教授 (40431481)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 母音長短の同定判断 / 中国語母語話者 / 語のアクセント型 / 母音の語中音節位置 |
研究実績の概要 |
本研究では中国語母語話者における日本語の母音長判断について、聴取対象母音の基本周波数および母音の語中音節位置の相違という観点から検討を進めている。検討結果に基づき、中国語母語話者における日本語母音の長短対立の習得過程に関するモデルを提示することを本研究では目指している。 平成29年度前半は、前年度までに作成した刺激音を用いて日本語母音の長短対立に関する知覚実験プログラムの構築を行った。本年度後半は主に知覚実験を実施した。実験の対象者は日本の大学に在籍する中国語話者で、対象者選定の際には中国語の母方言や日本滞在期間を考慮した。収集データ数は30名弱分である。また、中国語話者の比較対照として、東京方言あるいは神奈川方言を母方言とする大学生の日本語母語話者10名弱分のデータも得た。 実験には心理学実験用のソフトウェアを利用し、刺激音個別の母音長短の同定反応と反応時間の記録を実験参加者別に行った。実験に用いた刺激音は3-4音節からなり、語の音節構造はさまざまである。語のアクセント型もさまざまで、頭高型、中高型、尾高型、平板型である。聴取対象の母音の語中位置は語の拍数に応じて語頭・語中・語末である。 データ集計時には、主に母音長短同定の正答率を刺激音別に求めた。加えて、音節構造あるいは聴取対象母音の語中位置が同じ場合の同定率も算定した。実験結果は暫定的ではあるが、母音長短の同定判断の行いやすさは常に一定ではなく、聴取対象母音の音節位置や語の音節構造、語のアクセント型によって、同定時の難易度に違いがあることがこれまでに確認できている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は計画段階では平成28年度に知覚実験を実施する予定であった。しかし、実験に必要な刺激語を選定する平成27年度の段階で、中国語話者における日本語母音長判断に与える母音の語中音節位置と刺激語内のF0変動の影響を検討するためには、当初考えていたよりも刺激音の条件をかなり統制しなければならないことが分かり、刺激語の選定に予定していたよりも多くの時間を要することになった。その影響で、知覚実験プログラムの構築にも遅れが生じ、知覚実験の実施が平成29年度となった。
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今後の研究の推進方策 |
現状では日本滞在期間が長期間に及ぶ者の知覚実験のデータが不足している。そこで、平成30年度前半は特に日本滞在期間が長い中国人日本語学習者を対象とした知覚実験を実施する。データ収集と並行して、これまでに収集したデータの分析作業を量的な観点からも、実験参加者の個別性を重視した質的な観点からも行う。実験結果の考察は、第2言語の音韻習得に関する理論や学習モデル、その他関連する先行研究を適宜参照しながら行う。知覚実験の結果の公表は、今年度後半に行うことを目指している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、知覚実験の全データが収集できなかったため、実験参加者への謝金の支払い予定額に残額が発生したことによる。また、研究計画の遅れに伴い、結果の公表を行うことができず、研究会・学会等での発表に要する費用が発生しなかったことにもよる。 今後の使用計画としては、実験参加者への謝金、実験データの整理の補助を依頼する学部生・大学院生への謝金の支払いが中心になる。他にデータの分析・考察に必要となる文献資料(第二言語習得、統計分析関連など)や統計分析や発表に使用する電子機器の購入にかかる費用、実験結果公表のため研究会や学会参加に要する旅費等に充てる予定である。
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