研究課題/領域番号 |
15K02652
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
前田 理佳子 大東文化大学, 外国語学部, 講師 (10324732)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 減災のための「やさしい日本語」 / 「やさしい日本語」の類型 / 「やさしさ」をもたらす情報構造 |
研究実績の概要 |
減災のためのコミュニケーションを支える「やさしい日本語」資源を充実させるべく、データベースの整備のための基礎的研究を行った。 「やさしい日本語」データベースの整備は、第一に、緊急時に「やさしい日本語」による広報活動を行おうとする人にとってのモデルとして機能することを期するものである。第二に、場面、媒体、コミュニケーションの参加者等に即した調整を行う力を養うために十分な質・量を備えたリソースの確保を期するものである。これによって、「やさしい日本語」の使い手としての資質を高めるべく学習を開始する人・継続しようとする人にとって、より学習が起こりやすく動機付けを維持しやすいカリキュラム構築の基盤としての言語資源の整備をめざしている。 平成27年度は、まず既存の「やさしい日本語」資源を収集・整理して、特に減災に役立つ資源として開発ずみのものの種類(場面・媒体・難易度等)それぞれの実態把握と分析を行った。特にNGO、地方公共団体、国際交流団体、公共交通機関、警察、消防等によって使用された緊急情報、あるいは使用を予定して準備された資料に重点を置き、収集・整理を行った。それによって、72時間対応における「やさしい日本語」の具体案が存在していない部分を特定して、今後新規に開発が必要な「やさしい日本語」資源についての構想を得ることをめざした。 収集した「やさしい日本語」資源については、場面、媒体、難易度、多言語対応との連動その他の特性を比較対照し、既存の資源の傾向が概観できるリストを制作できた。72時間対応における「やさしい日本語」の既存の具体案の欠落部分や、伝達対象となる日本語を母語としない人々の日本語能力の設定に一貫性をもたせる必要がある部分を発見できた。また、語彙・文法項目の「やさしさ」のみならず、情報の配列について配慮がなされた「やさしい日本語」資源が不足していることを明らかにできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究開始後も「やさしい日本語」使用例が増加し続けており、使用例を網羅的に収集・整理することが極めて困難な状況になった。特に、収集対象として当初想定していたもののうち、携帯端末での閲覧を想定したFacebook、Twitter上での公的機関による緊急発信情報や、携帯電話各社及び地方自治体、外国人向け緊急情報配信サービス、民間ウェザーニュース配信サービス等が発信する緊急情報(地震情報、台風情報、注意報・警報、伝染病等に関する注意情報等)の文案の増加が著しい。伝達媒体の多様化に対応した「やさしい日本語」文体の文案提供を目指していたが、実際の活用が急速に進展しており、実態把握以上にモデル提示の重要性をより強く意識せざるを得ない状況になっている。
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今後の研究の推進方策 |
既存の「やさしい日本語」資源の網羅的な収集・分類よりも、典型例を抽出し特性記述をすることを優先し、コーパス化、モデル提示につなぐこととする。 研究協力者のうち複数名を研究分担者とするとともに、「やさしい日本語」資源のコーパス化・アーカイブ制作にあたるアルバイターを増員し、作業の迅速化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
コーパス資源の収集・整理にあたるアルバイターの増員がかなわず、人件費支出が当初予定よりも大幅に少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
コーパス資源の収集・整理にあたるアルバイターを増員する。
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